lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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原産協会メールマガジン6月号
2012年6月26日発行

        「原産協会メールマガジン」アンケートのお願い
 
 
当協会では、インターネットを通じて、会員およびより広い層の方々と、一層深いコミュニケーションを持つことができればと思い、2008年4月から毎月、月々の当協会の活動をご紹介する「原産協会メールマガジン」を配信させていただいております。

 今回、読者の皆様の声をメールマガジン制作に反映させていただくため、ご感想ならびにご意見をお伺いしたいと思います。アンケートによって得られた結果を参考にして、より多くの皆様に親しんでいただくことができる「原産協会メールマガジン」にしたいと存じますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 (アンケート募集期間:平成24年6月26日~平成24年7月20日)
こちらをクリックしてください!

Index

■原子力政策推進活動

 □平成24年度定時社員総会および平成24年度第2回理事会を開催
 □東北大学において原子力および高レベル放射性廃棄物についての対話集会を開催
 □「原子力若手討論会」で若い世代が熱い議論を展開 

■国際協力活動

 □ロシア国際フォーラム「ATOMEXPO-2012」参加訪ロ団派遣報告 

■情報発信・出版物・会合等のご案内

 □「輸送・貯蔵専門調査会」平成24年度会員募集
 □2012年版「世界の原子力発電開発の動向」を刊行

■ホームページの最新情報
■原産協会役員の最近の主な活動など
■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【38】

本文

■原子力政策推進活動

□平成24年度定時社員総会および平成24年度第2回理事会を開催

  当協会は6月21日、日本工業倶楽部において、平成24年度定時社員総会を開催しました(=写真)。平成23年度決算案、理事および監事選任、理事および監事の報酬等の額について諮り、満場一致で原案どおり承認されました。
 また、報告事項として平成23年度事業報告および平成24年度事業計画・予算について説明をしました。
 
 総会の冒頭、今井敬会長は挨拶の中で、当協会は、「福島の復興なくして日本の原子力の将来はない」との考えのもと、一日も早い被災地域の復興と、避難されている方々の帰宅に向けて、全力を傾注していくことを肝に銘じたいと思います。」と述べました。

 また、「電力供給において再生可能エネルギーの開発や省エネ、節電の推進がどの程度の成果をあげることができるかは、不確定要素が多く、原子力を放棄するようなことはありえず、原子力が一定の役割を果たさなければならないことは明らかである。」と指摘しました。「エネルギー政策は、一国内の情勢だけで定める問題ではないことも十分認識し、激動する世界のあらゆる変化を踏まえて、大局的な視点から、冷静に策定されるべきものと考えます。」と述べました。

 さらに、同会長は、「福島第一原子力発電所の事故は、大変残念なことですが、この事故の教訓を世界と共有し、原子力技術の維持・向上と、人材の確保・育成に努め、世界の原子力発電の安全性向上に貢献していくことは、わが国の重大な責務です。」と強調しました。

 総会には来賓として、北神圭朗・経済産業大臣政務官にご臨席頂きました。
 北神政務官は、「中長期的なエネルギー政策について、安全、安心が大前提であるが、一時的な熱狂で、国家のエネルギー政策を決めるべきではないと考えており、価格が安価、安定した供給の確保、環境的配慮の3つの視点にしっかり立って、エネルギー政策を決断していかなければいけない」と述べました。

 また、総会に引き続き、別室で平成24年度第2回理事会を開催しました。理事会では、新副会長に川村理事が、新常務理事に佐藤理事がそれぞれ選任されました。

平成24年度定時社員総会の会場風景

・総会、理事会後の新しい理事、監事名簿はこちら。

 なお、石塚昶雄、八束浩の両常務理事は退任し、今後はシニア アドバイザーとしての立場で常勤役員とともに事務局の運営に携わります。


□東北大学において原子力および高レベル放射性廃棄物についての対話集会を開催

 当協会は、福島の原子力事故により大きく損なわれた、原子力に対する社会からの信頼の回復への一助とするため、将来を担う若い世代である大学生を中心に、原子力および高レベル放射性廃棄物の処分問題について意見交換する活動を行っています。5月30日、東北大学(宮城県仙台市)において、1年生の一般教養科目の授業の一環として、午前および午後の2回、合わせて約100名の学生に「一緒に考えませんか。原子力のこと!廃棄物のこと!」と題した対話集会を開催しました。

 今回の対話集会は、以前から、高レベル放射性廃棄物処分問題に関するシンポジウムや理解活動に関連して交流のある同大学青木俊明准教授のご協力により実現しました。
 
 当協会からは、まず、原子力発電について「福島事故後のエネルギー政策」、「これまで国が積極的に原子力を進めてきた理由」、「今後、原子力発電をどのように進めるかに関係なく解決しなければならない課題、高レベル放射性廃棄物の地層処分」について説明しました。その後、学生と意見交換を行いました。

 原子力発電に関しては、「メタンハイドレートなどの発見や風力発電の導入もあるので、原子力発電が導入された頃よりは、新しい発電方法が出てきていると思うが、原子力の発電コストはどのくらいか」、「再稼働について、テレビではストレステストだけでは、十分ではないと言っていたが、どうなのか」、「国が原子力を進めてきた理由についての説明があったが、福島事故のようなことを考えた場合のリスクとメリットのバランスはどうなのか」、「原子力に対しては国の在りようが見えない。2030年のあるべき国の姿について、一般の方に理解を得るのが最後というのは、順番が違うのではないのか。国民を無視して勝手に決めているように思う」、「自然エネルギーの導入にはコストがかかるという問題があるが、原子力の危険性と照らし合わせるとどちらが大変な問題なのか」、「国が原子力発電を進めてきた理由についてはじめて聞いた。このような説明がなければ、皆、原子力発電について反対に回ると思うが」などの質問や意見が出ました。

対話集会の様子


 また、高レベル放射性廃棄物処分問題に関しては、「ガラス固化体を作るためには再処理をしなければならないが、実際、日本ではまだ実用化されていない。再処理が始まらなければ、地上で使用済燃料を保管することとなるが、量的に保管できるスペースはあるのか」、「地層処分場の容量はどの位なのか、1つの処分場ではどの位の期間の廃棄物がまかなえるのか」、「1つの処分場では4万本のガラス固化体を埋設する計画との説明であったが、今後、原子力が増えたらどうなるのか。廃棄物を埋めるスペースはあるのか」、「陸上で処分場を考えるだけでなく、海底に処分する方法はあり得るのか。領海内であれば無人島などの孤島で処分することは可能なのか」などの意見・質問が出されました。

 原子力の利用を含むエネルギー問題を巡る議論は、わが国の将来を大きく左右するものです。国は国民的議論を経て、わが国のエネルギー政策を決めることにしていますが、次の時代を担う若者たちには、積極的にこの議論に加わってほしいと思います。今回の意見交換会が、学生らにとって国民的議論の参加の是非について考える一助となることを願っています。



□ 「原子力若手討論会」で若い世代が熱い議論を展開  

 6月1日、東京で「原子力若手討論会」が開催され(=写真)、当初想定を上回る90名近い参加者があり、熱い議論を繰りひろげました。若手討論会は、原子力産業に携わる若手の啓発と組織を超えたネットワークの構築を目的として、日本原子力学会原子力青年ネットワーク連絡会(YGN)が幹事となり開催したものです。当協会は、会員に呼びかけ、参加者募集等の協力を行いました。
 
 討論会に参加したのは、次世代の原子力界を担う35歳以下の若者たちで、電力会社32名、メーカー19名、建設会社8名、商社6名、研究機関13名、大学2名、関連団体6名、行政機関2名の計88名でした。

 冒頭、YGN代表の城 隆久氏(日本原子力研究開発機構)が挨拶し、福島原子力発電所事故以降の業界の変動の中、同世代が問題意識を共有し、意見を発信することにより、「原子力の理想の姿を考えるきっかけにしたい」と討論会の目的を述べ、参加者に活発な討論を促しました。

 討論テーマについては、参加者の関心事項を事前に集約して、次の6テーマを設定しました:①エネルギー政策、②核燃料サイクル、③安全性の向上、④人材育成、⑤地域共生、⑥海外展開。
 これら6テーマについてYGN幹事がパネル討論形式で問題を提起後、全参加者がテーマごとに9グループに分かれてグループ討議を行い、最後に各グループの発表と全体質疑応答を行いました。2時間にわたるグループ討議では、グループごとに議長、書記、発表者を選び、討論の結果を整理してスライドにまとめ発表しあいました。

 発表では、エネルギー政策の選択肢のひとつとして原子力の位置づけ、安全性向上のための責任の明確化、専門家と非専門家のコミュニケーションギャップ等、多くの問題提起がありました。他方、原子力ルネサンスの火を再点火という前向きな主張もありました。原子力人材育成については、モチベーション低下の問題のほか、新入社員が増えて教える立場であるが、聞きたいことを教えてくれる中間層が少なく、技術力があるベテラン社員は退職間際で技術継承の難しさに直面している状況がどの業種にも共通した課題であることがわかりました。

 参加者からは、組織の枠をこえて関心あるテーマについて意見交換することによって視野を広め考えを深めることができた、普段の業務のなかでは話題になりにくいテーマについて同年代で真摯に議論し考えを共有することができ有益だった等、参加してよかった。今後も機会があれば参加したいとの声が多くありました。また、若者を派遣した多くの企業が、今回の討論会の成果を認め、今後もこのような機会があれば若手を参加させたいとの声を寄せてくださいました。


■国際協力活動

□ロシア国際フォーラム「ATOMEXPO-2012」参加訪ロ団派遣報告

 当協会は、今年で第4回となる露国営原子力企業ロスアトム主催の国際フォーラムATOMEXPO-2012に参加団(団長:服部理事長)を派遣しました。6月4日~6日、モスクワ市の中心部近くのゴスチニー・ドボルで開催された同フォーラムの主要テーマは「世界の原子力-福島から1年」で、53カ国、4000人以上の参加者、200名以上の発表から成る大きな国際会議・展示会でした。

 会議構成は、初日のWANO特別イベント「福島後の原子力産業-運転事業者の展望」、2日目のプレナリーセッションのほか、人材育成、再生エネルギー、原子力産業発展のための統合アプローチ、バックエンド、放射線技術、投資・資金調達、原子力安全・損害賠償に関する法制、北極航路、福島事故後のPA、エネルギー蓄電池の利用等、多様なテーマで分科会が開催されました。

 展示会場は昨年の2倍となり、ロシア国内外の有力な原子力機関・企業が出展していました。(ロスアトム、ロスエネルゴアトム、アトムエネルゴマシュ、カザトムプロム(カザフスタン)、CEA(仏)、EDF(仏)、シーメンス(独)、CNNC(中国)、ロールスロイス(英)等)(=写真下)

中国核工業集団公司(CNNC)
カザフスタン カザトムプロム
露 ロスアトム
露 ロスエネルゴアトム


 分科会や展示会では、ロスアトムおよびその傘下企業のポテンシャルの世界市場にむけたアピール力が強く感じられました。この開催の期間中、ロスアトムは海外の政府・原子力関係機関との間で複数の合意書を交わしています。(例:ナイジェリア、バングラデシュ、モンゴル、南アフリカ原子力公社(NECSA)等)

 会期中、服部団長はロスアトムのキリエンコ総裁と懇談しました。服部団長は、日本では原子力への逆風が当面続くものの日露原子力協定の発効により日露の協力が新たな時代へ突入したと述べ、双方が原子力先進国として新規導入国に対して競争と協調のバランスをとりながら取り組んでいきたいと述べました。これに対し、キリエンコ総裁は、協定発効を契機として協力分野の具体化とその加速化をはかりたいと答えました。また、キリエンコ総裁は福島事故対応への協力支援として、福島第一原発における高線量下でも稼動可能なロシア製ロボット・カメラを紹介しました(=写真下)。



 さらに、日本の原子力政策の行方に着目しているとして、停止中の原子炉の運転再開の行方を問うとともに、困難な時期は支えあい、原子力が回復した後に競争していきたい、と述べました。


 会議では、WANO主催の特別イベント「福島後の原子力産業-運転事業者の展望」がアスモロフWANO総裁兼ロスエネルゴアトム第一副社長の進行により開催されました。日本からは服部理事長、東電・川村福島第二原発ユニット所長が発表しました。服部理事長は福島第一原発事故の教訓と題し、続き川村ユニット所長は、福島第二原発の教訓と福島第一原発の現状と題して発表を行いました。事故から教訓を導き出す、両名の的確で深い洞察力に会場から大きな賞賛が送られました(=写真右


 それと並行して実施された人材育成に関するセッション(議長:アルティシュク中央先進訓練研究所副学長)では、東京工業大学の斎藤教授(原子力安全と核物質防護にむけたグローバルな人材開発プログラム)と、国際原子力開発の水野氏(ベトナム ニントゥアン第二原発にむけた人材育成プログラム、日本の電力業界の見方から)が発表をしました。

 プレナリーセッションにおいても発表した服部団長は、日本の国民に原子力が再び受け入れられるまでには長く険しい道が続くが、それを克服しない限り原子力に将来はない、とする一方、世界有数の原子力技術先進国として日本に期待する声も依然として大きく、日本は福島の教訓を経て、世界の原子力安全に貢献する責任があると述べました。さらに、原子力への信頼を回復するために、国民に対して透明性と信頼性の高い情報の提供とコミュニケーションを実施することが何よりも重要であると述べました。同セッションでは、ロシア(ロクシン・ロスアトム第一副総裁)、フランス(AREVA)、カナダ(ウラニウム・ワン)、南アフリカ(エネルギー大臣)、英国(ロールスロイスニュークリア)といった原子力利用国のほか、福島事故後も原子力開発計画を継続する意向をもつ新規導入国として、トルコ(エネルギー天然資源省次官)、ベラルーシ(エネルギー大臣)らが出席しました。ロスアトムのロクシン第一副総裁は、ロシアでは、福島事故後に原子力賛成が50%近くまで落ち込んだものの、2012年には70%近くまで回復、原発輸出契約数も21基と昨年初めの12基から大きく増大していることを紹介しました。

プレナリーセッション


 参加団は、この訪ロの機会をとらえ、クルチャトフ研究所(モスクワ市)、中央先進訓練研究所(オブニンスク市)、フローピン研究所記念館(サンクトペテルブルグ市)、レニングラード原発と重金属除染・再生利用施設(ソスノボイ・ボール市)を訪問しました。


クルチャトフ研究所
 ロシアにおける中小型炉開発(IAEAの革新的原子炉と燃料サイクルに関する国際プロジェクト-INPROの枠内で開発)に関するプレゼンを受け、意見交換を行いました。主にKLT-40C(70MWe、3年間燃料取替不要、定期検査は10-12年毎)、と新型RTM-200(150MWt、8年間燃料取替不要、定期検査は20年毎)を例に紹介がありました。
中小型炉は①コスト、②ポテンシャル・カスタマー、③国際社会の理解、が課題であるが、福島事故後、中小型炉への開発の影響はないか、との日本側の問いに対し、事故はロシアの中小型炉の開発が正しかったことを裏付けることになったとし、中小型炉は大型炉と根本的に異なる安全性を達成できること、例えば、調査の結果、カムチャッカのビリュチンスク市に係留される浮揚型原発は、マグニチュード9、入江での津波が30mに達しても問題がなく、コストの問題は、量産化することで解決できる、と述べました。一連の議論を受け、日本側からは立地点の問題やコストの観点から日本では大型炉を推進してきたが、福島第一原発事故後は、安全性、PA等の点から中小型炉を志向する意見もある中で、両者が相互補完・共存しうるものとなろう、と述べました。

ベリホフ・クルチャトフ研究所総裁
(向かって右から2番目)も出席
  グズネツォフ同研究所内 物理技術研究所副所長
  によるロシア側メンバー紹介(中央立)



中央先進訓練研究所 (CICE&T)
 同研究所は、ロシア原子力産業界に所属する管理者、従業員等の教育・訓練の場です。ロスアトム、アトムエネルゴプロム傘下にありますが、2011年、IAEAとの原子力新興国の人材育成協力覚書を締結するなど、海外原子力関係機関との交流も盛んで、海外から多数の研修生を受け入れています。同研究所で講義を受け、実地訓練はロシアの各原発のシミュレーターや、設備製造工場等で行うことになっています。受講対象者の所属機関、希望する講義内容別に多様なコースがアレンジされており、極めてシステム化された教育訓練を実施しています。実地訓練の例としてバラコボNPP(VVER-1000)における実績が紹介され、1999-2005年、クダンクラムNPP(印)、ブシェールNPP(イラン)、田湾NPP(中国)から900名の研修生を受け入れ、On-the-job training (OJT)で320時間のコース受講の事例が紹介されました。長期滞在を快適にする衣食住環境も完備されています。

向かって左:アルティシュク副学長
      右:セレズネフ学長



フローピン記念ラジウム研究所記念館
 1922年に創立され、今年で90周年を迎えるロシア最古の原子力研究所。研究所の当初の目的はラジウム生成技術の開発。当時、ロシア製のラジウム生成技術は世界的に認められており、例えば、マリー・キュリーやガイガーも当研究所を高く評価し、マリー・キュリーは当館の生成ラジウムの質に関する認定証を送っています(写真)。1945年にソ連が原発開発を決定した際、当研究所はプルトニウム生成に従事し、ロシアの使用済燃料の第一再処理工場(マヤク)プロジェクトにも参加しています。1986年のチェルノブイリ事故では、多くの研究者を派遣し、事故収束に貢献したとのこと。欧州初のサイクロトロンを開発したのもこの研究所です。現在は、核物理、放射化学の分野の研究、アイソトープ生成等の事業活動を行い、ソ連崩壊後、若い研究者の不足に悩んだが、昨今の原子力産業の復興により若い研究者数が増えているといいます。

認定証:キュリー夫人署名部分



レニングラード原発(LNPP)
 厳重な入構管理を受けた後、所長代行兼主任技師から同原発の歴史と現状、特に安全性向上、改良策について説明を受けました。

 第1サイトにはRBMK-1000(電気出力1000MWe)が4基あり、1号機は1973年に運転開始されています。(2、3、4号機は各1975、1979、1981年に運転開始)
設計年間電力量280億kWh、設計設備利用率79.9%、運転開始年からの累計発電電力量は8500億kWh。ロシア北西地域の送電系統ではコラ原発と連結し、同地域の全発電設備容量1970万kWの内、29%を両原発が占めています。

 当初の設計寿命は30年ですが、安全性向上やコンポーネントのライフマネジメントにより寿命延長をはかり15年の運転延長ライセンスを取得しています。

 TMI事故、チェルノブイリ事故の両事故を受けて安全文化が生まれ、深い安全性解析により、安全性向上の5つの主要分野(①原子炉安全、②エンジニアリング安全、③放射線安全、④火災安全、⑤核物質防護)で対策を講じたとのことです。例えば、EPSS(非常用電源供給系)、ECCS(非常用炉心冷却系)、海抜6m以上の位置に新たな海水ポンプステーションの増設や、制御棒構造を改良(事故時の挿入速度5~6倍、制御棒が2秒で炉心挿入)、換気設計を完全循環方式に変更し、除染係数を2桁以上向上させた事例等が紹介されました。また、自動放射線モニタリングシステムの導入により、オンラインでデータが原発、地元自治体、ペテルブルグ危機センター、ロスエネルゴアトムの危機管理センター、隣国のフィンランドに伝達される仕組みもあります。なお、現在、福島第一原発事故を受け、全電源喪失対策を1年半かけて実施している最中で現在その最終段階にあるそうです。毎週1回、ロスエネルゴアトム主催により各発電所の主任技師が情報交換をするTV会議が開催されているとのこと。
 説明の後、1号機(運転中)の中央制御室、原子炉ホールを視察しました。

 また、レニングラード原発第2(AES-2006)建設現場も視察しました。VVER-1200(AES-2006、電気出力1170MW)の4基を建設予定で、現在、1号機、2号機建屋が建設中(1号機の燃料装荷は2014年12月、初臨界は2015年2月を予定。2号機は2016年の運転開始予定)。原子炉建屋、新燃料保管設備、マグニチュード9の地震でも損傷を受けない耐震設計で、二重の格納容器構造。シビアアクシデント対策にコリウム・キャッチャーを採用しています。主要通路は地下に設置し、地震時も従業員の安全を確保するとのこと。建設に9ヶ月の遅延が生じているが、主な要因は設計プログラムの互換性の問題や福島事故を受けた設計変更等であり、冷却塔建設のための岩盤補強対策で7ヶ月の遅れが生じたとのことでした。

〈ECOMET-S(重金属除染・再生利用処理施設)〉
 レニングラード原発の産業サイト内にある同施設は、原発や核燃料サイクル施設、他産業施設から出る、低レベル固体(金属等)放射性廃棄物(~0.3mSv/h)処理設備(処理能力6000トン/年)です。2002年操業開始。2005年本格稼動。アルミニウム、チタニウム等の非鉄金属を含む各種の金属処理を実施しています。放射線環境はロシアの規定許容範囲内で、放射線安全確保は原発と同等。20箇所に線量計を配備。工場の目標は廃棄物の最大減容化であり、原発の廃棄物の減容率は25-30倍とのこと。肉厚の金属廃棄物(例:蒸気発生器や再循環ポンプの蓋)もここで処理処分をするが、まず線量測定の上、ブラスト処理で表面汚染を落としてから冶金ショップで溶融炉に入れる。ほとんどは再利用が可能で、処理後の金属スクラップやインゴットは北欧等に輸出しているそうです。


■情報発信・出版物・会合等のご案内

□「輸送・貯蔵専門調査会」平成24年度会員募集

 当協会が実施している「輸送・貯蔵専門調査会」では、原子燃料物質等の輸送および貯蔵に関する研究・技術開発動向、ならびに関連法令や技術基準の国際動向の現状などに関し、講演、関連施設の見学、意見交換を通じた専門情報の提供・交流活動を実施しています。当調査会の場を一層活用して頂くため、輸送貯蔵関係の若手技術者に貢献すべく、平成20年度より準会員制度を設けて、多くの方が参加できるように定例会合を開催しています。
 昨年度の主なテーマは、①福島第一原子力発電所の状況、②TMI破損燃料の取り出し・輸送・貯蔵、③IAEA放射性物質輸送安全・セキュリティ国際会議報告、④福島第一における使用済燃料プールからの燃料取り出しに係わるキャスクの活用計画、⑤英国の原子力・原子燃料事情、⑥除染モデル事業等の結果概要、⑦サイト外における除染・廃棄物の取組み/そこに潜在する輸送問題についてなどでした。 今後も原子力開発利用の進展状況や会員のニーズに対応して活動を展開してまいりますので、多数の皆様のご参加をお待ちしています。

詳細はこちらをご覧ください。
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/yuso/index.html


□2012年版「世界の原子力発電開発の動向」を刊行

 当協会はこのほど、2012年1月1日現在の世界の原子力発電所と核燃料サイクル施設の状況とデータをまとめた「世界の原子力発電開発の動向-2012年版」を刊行しました。
 世界の原子力発電所一覧表には、国別の各発電所の状況、炉型・原子炉モデルを始め発注・着工から営業運転までの年月や設備利用率、主契約者、供給者、運転サイクル期間等、広範な情報を網羅しています。
 今回、福島事故後の世界の原子力発電をめぐる動向、各国の安全対策について、アンケート調査を実施した内容などを掲載しています。
 
詳細はこちらをご覧ください。


■ホームページの最新情報

□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。
・『ベラルーシにおける情報センターの取り組みについて』を掲載 (5/31)
・「世界の原子力発電開発の動向2012年版」を刊行(5/31)
・【アジア原子力情報】サイトに「トルコの原子力発電開発の現状」を掲載 (5/28)
・福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等の状況 (随時)
・福島原子力発電所に関する環境影響・放射線被ばく情報 (木曜日更新)
・福島地域・支援情報ページ (随時)
 地元自治体の動きやニュース、地元物産・製品等の情報を掲載中
・「日本の原子力発電所(福島事故前後の運転状況)」を掲載 (随時)


□JaifTv動画配信(http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive44.html
・「放射線についてのQ&A -基礎編-」(5/31公開)
http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive46.html

・「TOPICS - 第45回原産年次大会と日英原子力サミット」(5/28公開)
http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive45.html


□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/

・【海外原子力情報】2012年5月分と4月分を追加、掲載(6/13)
・【日本の原子力発電所の運転実績】5月分データを掲載(6/11)



□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/
・Atoms in Japan:英文原子力ニュース(AIJ) (随時)
・Earthquake Report (毎日更新)
・Status of the efforts towards the Decommissioning of Fukushima Daiichi
 Unit 1-4 (随時)
・Environmental effect caused by the nuclear power accident at Fukushima
 Daiichi nuclear power station (木曜日更新)

[Information]
* JAIF Report: Moves Afoot to Restart Nuclear Power Plant Operation and
its Related Issues (6/18)
* Stress Test and Restart Status (随時)
* Current Status before and after the earthquake (随時)
* Operating Records of Nuclear Power Plants (随時)
* Developments in Energy and Nuclear Policies after Fukushima Accident
 in Japan (随時)
* Trend of Public Opinions on Nuclear Energy after Fukushima Accident  
in Japan (随時)

[福島事故情報専用ページ] 「Information on Fukushima Nuclear Accident


■原産協会役員の最近の主な活動など

[服部理事長]
・6/2~6/10  ATOMEXPO2012にて講演他のためロシア出張
・6/12  IAEA原子力マネージメントスクールにて講演(東海村)
・6/23~6/28  ICAPP2012にて登壇他のため米国出張

[石塚シニアアドバイザー]
・6/22  敦賀市長訪問、福井大学附属国際原子力工学研究所視察等(敦賀市)
・6/27  IAEA原子力マネージメントスクール原産主催レセプション出席(東海村)
            
[八束シニアアドバイザー]
・6/4 北陸原子力懇談会総会出席(金沢市)


■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【38】

ブラッセル補足条約とジョイントプロトコール
 今回は、パリ条約とウィーン条約を連結するジョイントプロトコールと、パリ条約の制度を補足するブラッセル補足条約についてQ&A方式でお話します。


Q1. (ジョイントプロトコール)
パリ条約とウィーン条約を連結するジョイントプロトコールはどのような条約ですか?

A1.
・ 「ジョイントプロトコール」とは、類似した規定を持つパリ条約とウィーン条約を結びつけて、それぞれの条約の加盟国における被害者救済措置を拡大するための共同議定書です。
・ ジョイントプロトコールの加盟国間において、事故を起こした国と損害を受けた国が異なる条約に加盟していた場合には、事故発生国の加盟する条約が損害を受けた国にも適用されます。
・ ジョイントプロトコールの加盟国間においては、一つの事故についてウィーン条約又はパリ条約のいずれか一方が他方を排斥して適用されます。


【A1.の解説】
 OECDの枠組みの中で採択されたパリ条約と、IAEAのもとで採択されたウィーン条約は、共に原子力損害賠償に関する国際条約として1960年代に創設され、類似した規定を持っています。しかし、両方の条約に加盟している国はなく、また、条約は加盟国間のみで有効であるため、パリ条約の締約国とウィーン条約の締約国との間に発生する越境損害においては、どちらの条約も効力を持ち得ないことになります。

 このような背景のもと、パリ条約とウィーン条約の連結によって条約の実効性を高めるための議論は1970年代半ば頃から行われていましたが、1986年4月に発生したチェルノブイリ原発事故をきっかけとして急速に実現への機運が高まりました。
 その結果、IAEAを中心として検討が行われ、それぞれの条約の効果を相互に拡張することによってパリ条約とウィーン条約とを結び付けるジョイントプロトコールが1988年に採択されました。

 ジョイントプロトコールとは1988年9月21日に採択され、1992年4月27日に発効した「ウィーン条約及びパリ条約の適用に関する共同議定書」を指します。事故を起こした国と損害を受けた国が異なる条約に加盟していたとしても、ジョイントプロトコールの加盟国間においては、事故を起こした締約国が加盟する条約(ウィーン条約又はパリ条約)に従って他国への越境損害に対する賠償処理が実施されることになります。また、一つの事故に対してはウィーン条約又はパリ条約のいずれか一方が他方を排斥して適用されることとなります。

 2009年7月28日時点において下記の26カ国(○印)がジョイントプロトコールの締約国です。

 
 ジョイントプロトコールの主な規定事項は以下の通りです。

第1条(定義)
・ ウィーン条約の定義、パリ条約の定義

第2条(原子力損害に適用する条約)
・ ジョイントプロトコールを適用する上で、ウィーン条約の締約国にある原子力施設の運転者は、パリ条約とジョイントプロトコールの両方を締約する国の原子力損害について、ウィーン条約に従って責任を負う。
・ ジョイントプロトコールを適用する上で、パリ条約の締約国にある原子力施設の運転者は、ウィーン条約とジョイントプロトコールの両方を締約する国の原子力損害について、パリ条約に従って責任を負う。

第3条(事故発生国の条約の適用)
・ 一つの原子力事故に対しては、ウィーン条約又はパリ条約のいずれか一方が他方を排斥して適用される。
・ 事故発生国が締約国である条約が適用される。
・ 輸送中などの原子力事故の場合、責任を負う運転者の原子力施設を持つ国が締約国である条約が適用される。

第4条(通貨交換及び無差別に係る適用)
・ ウィーン条約の1条(定義)と15条(原子力損害の賠償等の資金が、損害が生じた締約国等の通貨に自由にできるよう適切な措置を講じる)に関する条項は、パリ条約とジョイントプロトコールの両方を締約する国に関しては、ウィーン条約の締約国間と同じように適用される。
・ パリ条約の1条(定義)と14条(パリ条約は、国籍、住所、居所による差別無く適用される)の条項は、ウィーン条約とジョイントプロトコールの両方を締約する国に関しては、パリ条約の締約国間と同じように適用される。

第5条(署名)
・ ジョイントプロトコールは発効するまでの間、ウィーン条約又はパリ条約に加盟した全ての国が署名できる。

第6条(批准書等)
・ 批准書等は、ウィーン条約又はパリ条約の締約国からのものだけを受領する。
・ 批准書等はIAEAの事務局長に寄託される。

第7条(発効)
・ ウィーン条約の締約国5カ国以上と、パリ条約の締約国5カ国以上による批准等の3ヵ月後に発効する。
・ ジョイントプロトコールは、ウィーン条約とパリ条約の効力がある限り効力を持つ。

第8条(破棄)
・ 締約国は寄託者に対する書面による通知によりジョイントプロトコールを破棄することができる。
・ 寄託者が通知を受領してから1年後に破棄される。

第9条(適用の終了)
・ ウィーン条約又はパリ条約の適用を終了させる締約国は、終了する日をもってジョイントプロトコールも適用されなくなる。

第10条(諸事項の通知)
・ 寄託者は、締約国等と同様にOECDの事務局長に対しても諸事項を通知する。

第11条(原本及び謄本)
・ ジョイントプロトコールの原本は寄託者に寄託され、寄託者はその謄本を締約国等とOECDの事務局長に送付する。

ウィーン条約についてはこちら
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/genbaihou_series37.html
パリ条約についてはこちら
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/genbaihou_series35.html
ジョイントプロトコールと各条約との関係についてはこちら
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/mag/shosai04.pdf


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Q2.(ブラッセル補足条約)
パリ条約を補強するブラッセル補足条約はどのような条約ですか?


A2.
・ 「ブラッセル補足条約」とは、パリ条約を補強するものであり、原子力損害に対するパリ条約の賠償額を増額するための条約です。
・ 2004年の改正議定書である改正ブラッセル補足条約は改正パリ条約を補強するものですが、まだ発効していません。
・ ブラッセル補足条約はパリ条約で義務付けられている500万SDRの賠償措置を補足条約加盟国の資金拠出により3億SDRに、一方、未発効の改正ブラッセル補足条約は改正パリ条約で義務付けられている7億ユーロを15億ユーロにします。


【A2.の解説】
 原子力損害賠償に関する「ブラッセル補足条約」とは、「1964年1月28日の追加議定書及び1982年11月16日の議定書により改正された1960年7月29日のパリ条約を補足する1963年1月31日の条約」を指します。この条約は1974年12月4日に発効し、その後1982年11月16日に改正されて現在に至っています。ブラッセル補足条約は2004年にも改正されましたが、2004年2月12日に締結された議定書は発効しておらず(元になる改正パリ条約が発効していないため)、これは「改正ブラッセル補足条約」と呼ばれています。

 欧州では原子力開発の初期段階から越境損害に関わる賠償問題に備えて国際間のルール作りが進められてきました。ブラッセル補足条約は、1960年に採択されたパリ条約の制度を補足するものとして、原子力損害に対する賠償額を増額するための条約です。
 ブラッセル補足条約を締結すると、パリ条約で義務付けられている500万SDR(約6億円)の賠償措置に加え、1億7500万SDR(約209億円)までは補足条約の原子力施設国が用意する公的資金によって支払われ、1億7500万SDRから3億SDR(約359億円)までは同条約の締約国が用意する公的資金によって支払われることになります。未発効の改正ブラッセル補足条約は同様に、改正パリ条約で義務付けられる7億ユーロ(約696億円)に加え、12億ユーロ(約1193億円)までは原子力施設国の公的資金によって、15億ユーロ(約1491億円)までは締約国により用意される資金から支払われることになります。

 2010年5月5日時点において、ブラッセル補足条約には、パリ条約加盟国のうち以下の12カ国(○印)が加盟しています。
 


 改正ブラッセル補足条約には以下のような事項が規定されています。

第1条(パリ条約との関係)
・ 改正ブラッセル補足条約の制度は改正パリ条約の制度を補足するものであって、改正パリ条約の規定に従うものとし、かつ改正ブラッセル補足条約が適用される。

第2条(適用範囲)
・ 以下の原子力損害に適用される。
1. 締約国の領域内で生じたもの
2. 非締約国で生じたものを除き、締約国の領域外の海域又はその海域上空で生じたものであって、締約国に関する場所や締約国の国民が被ったもの
3. 締約国の排他的経済水域内や大陸棚で生じたもの

第3条(補完資金のシステム)
・ 締約国は、一事故あたり15億ユーロまでの原子力損害を賠償することを約束する。
・ 賠償資金は以下のように調達される。
1. 7億ユーロまでは保険その他の資金的保証又は改正パリ条約に従って提供される公的資金
2. 7億ユーロと12億ユーロとの間の額は、責任を負う運転者の原子力施設がある国によって用意される公的資金
3. 12億ユーロと15億ユーロの間の額は、12条に定める分担の計算式に従って締約国により用意される公的資金

第5条(締約国の請求権)
・ 運営者が、改正パリ条約に従って求償権を持つ場合、改正ブラッセル補足条約の締約国は、第3条の公的資金の限度内で同じ求償権を持つ。

第6条(消滅時効との関係)
・ 改正ブラッセル補足条約による公的資金の算定においては、原子力事故の発生日から、死亡・傷害の場合は30年以内、その他は10年以内に行使される賠償請求権に限る。

第7条(改正パリ条約第8条(d)との関係)
・ 締約国が改正パリ条約第8条(d)(国内法により3年を下らない期間で賠償請求権の消滅時効期間や除斥期間を定めることができるという規定)を行使する場合には、少なくとも3年を消滅時効期間とする。

第8条(十分な補償を受ける権利)
・ 損害の額が15億ユーロを超えるおそれがある場合、締約国は、改正ブラッセル補足条約の下で用意される補償額の配分について公平な基準を設けることができる。

第9条(公的資金の必要性)
・ 改正ブラッセル補足条約による賠償額が12億ユーロに達した場合、運転者の資金余裕や運転者の責任額制限の可否に関わらず、締約国は公的資金の拠出を求められる。

第10条(公的資金からの支出)
・ 自国に国際裁判管轄権を有する締約国は、原子力損害が12億ユーロを超えるおそれがある場合、直ちに原子力事故の発生及びその状況を各締約国に通告しなければならない。
・ 自国に国際裁判管轄権を有する締約国だけが、各締約国に公的資金を用意させる権限及びその資金を配分する権限を持つ。
・ 国内法に定める条件に従って為された公的資金の支払いについて、他の締約国は承認しなければならない。賠償に関して管轄権を有する裁判所が下した判決は、改正パリ条約の規定に従って他の締約国の領域内で執行できる。

第11条(原子力施設がない締約国が裁判管轄権をもつ場合)
・ 責任を負う運転者の原子力施設を持たない締約国の裁判所が裁判管轄権を持つ場合、7億ユーロから12億ユーロまでの公的資金は、当該国が用意し、責任を負う運転者の原子力施設を持つ締約国がその金額を当該国に償還する。

第12条(締約国による公的資金の分担の計算)
・ 締約国が用意する12億ユーロから15億ユーロまでの公的資金の拠出分担式
1. 35%は各締約国のGDPと全締約国のGDPとの比率を基礎として計算する。
2. 65%は各締約国の原子炉の熱出力と全締約国の原子炉の熱出力の比率を基礎として計算する。
・ 改正ブラッセル補足条約に加入する場合、公的資金は増加される。増加額は、加入国のGDPと原子炉の熱出力によって決定される額を1,000ユーロ単位に切り上げた額とする。

第13条(原子力施設の目録)
・ 締約国は、改正パリ条約第1条の定義に該当する原子力施設(原子炉、核物質の加工工場、再処理工場、核物質の貯蔵施設等)を全て目録に掲載しなければならない。

第14条(締約国による公的資金の利用可能性)
・ 締約国が改正ブラッセル補足条約や改正パリ条約の適用範囲外の事項について規定を制定することを妨げない。ただし公的資金に関する規定は締約国の義務を増加させるようなものであってはならない。
・ 改正ブラッセル補足条約の全ての加盟国が原子力損害の補完的補償に関する他の条約に加盟した場合は、その条約の義務を満たすために、改正ブラッセル補足条約の締約国の公的資金として準備される資金を使ってよい。

第15条(改正ブラッセル補足条約の締約国ではない国家との補償合意)
・ 改正ブラッセル補足条約の締約国は、非締約国と、原子力損害に対する公的資金からの賠償について、協定を結ぶことができる。
・ このような協定による賠償の支払い条件が、改正パリ条約や改正ブラッセル補足条約に関係して締約国の講じる措置の条件よりも有利でない限り、協定によって支払われるものは、第8条(損害の額が15億ユーロを超えるおそれがある場合に配分の基準を設ける)が適用される場合に全損害額の算定において考慮される。

第16条(協議)
・ 締約国は、改正ブラッセル補足条約及び改正パリ条約の適用から生じる共通の関心事項の全てについて、相互に協議する。
・ 改正ブラッセル補足条約の発効した日から5年後に、または締約国の申立てがあるときはいつでも、この条約の改正が望ましいかどうかについて相互に協議する。

第17条(紛争解決手続き)
・ 改正ブラッセル補足条約の解釈や適用に関して締約国間に紛争が生じた場合には、当事国は交渉等により協議する。
・ 紛争が解決されない場合には締約国が友好的解決を支援するための会合を開く。会合によっても紛争が解決しない場合は、欧州原子力裁判所に付託される。
・ 原子力事故が改正パリ条約と改正ブラッセル補足条約の解釈や適用に関して締約国間に紛争を生じさせた場合、紛争解決の手続きはパリ条約に定める手続きによる。

第18条(留保)
・ 全ての署名国が承諾を与えた場合には、規定を留保できる。

第19条(パリ条約締約国であることの要件)
・ 改正パリ条約の締約国でない国は、改正ブラッセル補足条約の締約国になることや締約国にとどまることはできない。

第20条(発効等)
・ 改正ブラッセル補足条約の批准書等はベルギー政府に寄託される。
・ 改正ブラッセル補足条約は、6番目の批准書が寄託された3ヵ月後に効力を生ずる。

第21条(改正)
・ 改正ブラッセル補足条約の改正は、すべての締約国の合意によって行われなければならない。

第22条(加入)
・ 改正パリ条約の締約国であって改正ブラッセル補足条約に署名していない国は、改正ブラッセル補足条約が発効した後、ベルギー政府に対する通告によって改正ブラッセル補足条約への加入を求めることができる。
・ 加入書の寄託から3ヵ月後に加入の効力が発生する。

第23条(失効)
・ 改正ブラッセル補足条約は改正パリ条約が失効するまで効力を持つ。
・ 改正ブラッセル補足条約の失効や締約国の脱退は、失効や脱退の日の前に発生した原子力事故の損害に対する賠償の支払いについて、各締約国が負った義務を終了させるものではない。

第24条(領域の一部への適用)
・ 改正ブラッセル補足条約は、締約国の本土の領域に適用される。
・ 改正パリ条約がある領域について適用されなくなった場合は、改正ブラッセル補足条約も適用されなくなる。

第25条(寄託者の義務)
・ ベルギー政府は、全ての署名国及び加入国政府に対して、批准書等の受領を通知する。

改正パリ条約についてはこちら
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/genbaihou_series35.html



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○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2011年10月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」を冊子にまとめました。

 冊子「あなたに知ってもらいたい原賠制度2011年版」入手をご希望の方は、有料[当協会会員1000円、非会員2000円(消費税・送料込み)]にて頒布しておりますので、(1)必要部数、(2)送付先、(3)請求書宛名、(4)ご連絡先をEメールで genbai@jaif.or.jp へ、もしくはFAXで03-6812-7110へお送りください。

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