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原産協会メールマガジン4月号 2013年4月26日発行 |
Index
□原子力発電に係る産業動向調査2011の概要
□近藤原子力委員長が人材育成ネットワーク委員会に出席
□原子力産業セミナーの概要を原子力委員会で報告
□スロバキア原子力安全国際シンポジウムにて服部理事長が講演
□FORATOMと共催で『Japanese Day』を開催
□原産協会、英国調査団を派遣
□「原子力発電所の進展に関する2013年国際会議(ICAPP2013)」(韓国・済州島開催)で服部理事長が講演
本文
当協会は3月27日、2011年度の原子力発電に係る産業動向に関するデータをとりまとめ、その概要を公表しました。調査対象は当協会会員企業および原子力発電産業に係る支出や売上、従事者を有する営利を目的とした企業で、対象企業数は570社、うち208社(内訳:電気事業者11社、鉱工業他197社)から回答を得ました。調査実施期間は、2012年10月25日~2012年12月21日です。
今回の調査は、福島第一原子力発電所事故後の2011年度を対象とした原子力産業への影響を探る初めての調査となります。また、今年度調査より、原子力発電所の長期停止による立地地域への影響を把握する目的で、定量調査では「立地道県内における地元雇用者数」を、アンケートによる意識調査では「原子力発電所の運転停止に伴う各社への影響」を新たに調査しました。
2011年度の大きな動きとしては、電気事業者の支出高、鉱工業他の売上高が減少している点が挙げられます。電気事業者の支出高は対前年度比で3,318億円減少(15.5%減)の1兆8,101億円、鉱工業他の売上高は822億円減少(4.6%減)の1兆7,220億円となりました。福島第一原子力発電所の事故や原子力発電所の長期停止の影響を受け、業界環境は悪化しているものと見られます。
一方、原子力関係従事者数は全体で241人増加(1.8%増)の4万6,423人と前年度までの増加傾向が継続しました。また本年度より、原子力発電所の立地地域における地元雇用者数(原子力発電所立地道県居住者数)について調査したところ、全体で1万8,218人となり、業界における従事者全体の39.2%を占める結果となりました。
またアンケートでは、2012年度の原子力業界の景況感として、業界の景況は総じて「悪い」という回答の企業がほとんどであり、現在の原子力関連事業を取り巻く景況を約86%(対前年度比+約14%)の企業が「悪い」と回答しています。2013年度も、景況感は「悪くなる」という回答が約75%を占める結果となりました。
さらに原子力発電所の運転停止による影響を尋ねると、売上減少の影響を受けていると回答した企業が多く(約68%)、今後減少する見込みと回答した企業を合わせると約87%が売上減少の影響があると回答しています。今後売上以外で予想される影響としては、「人員の配置転換」(約25%)、「雇用の縮小」(約16%)、「他分野への資源(資金・人員等)の重点化」(16%)、「技術力の低下への懸念」(約15%)等が挙げられています。
このように、原子力発電所の停止の影響として、2011年度の電気事業者の支出高、鉱工業他の売上高が減少する結果となりました。アンケート調査結果からも、約9割の企業が売上減少、あるいは今後減少する見込みと回答していることから、多くの企業が次年度以降も厳しい状況が続くと考えていることがうかがえます。また今後売上以外で想定される影響として、人員の配置転換や雇用の縮小等、人員面への影響を指摘する企業が半数を超えていることから、今後さらに原子力発電所の停止が長期化すれば、人員関係への影響が予想されます。
なお本調査結果は、報告書として刊行され、現在販売中です(販売価格:会員企業6,000円、非会員企業9,000円)。
「原子力人材育成ネットワーク」の運営委員会(平成24年度第2回、委員長:服部拓也 当協会理事長)が3月25日に開催。近藤駿介・原子力委員長より、原子力委員会が昨年11月に発表した「原子力人材の確保・育成に関する取組の推進について(見解)」について、説明がありました(=写真)。
同ネットワークは、産学官の連携により、原子力に係わる社会的基盤整備や人材確保を図るネットワークとして平成22年11月に設立されたもので、当協会は、日本原子力研究開発機構とともにネットワーク共同事務局とし
て、教育・訓練に関する情報収集(データベース構築)や関係者間の連絡調整を図っています。
運営委員会で近藤委員長は、「原子力人材育成ネットワークには、平成22年11月の発足当初から期待している。その後環境は激変したが、人材育成については優先順位づけして取組みを実行していくことが重要である」と、「原子力人材の確保・育成に関する取組の推進について(見解)」を発表した背景について説明しました。また、昨今の若者の原子力離れの懸念に関連して、「市場に受入れられる技術が生き残るのであり、比較優位性を持つよう努力することが重要」と、産業界への期待を述べました。
原子力委員会が見解として提示した課題は、次の11項目です。
① 原子力人材需給ギャップの予測分析の取組
② 東電福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた教育機関における原子力教育の取組
③ 教育機関における原子力学習機会の整備への取組
④ 放射線教育の整備
⑤ 社会人教育機能の整備
⑥ 原子力安全、核セキュリティ及び保障措置に関する人材の育成
⑦ 原子力分野の業務に従事するインセンティブ強化の取組
⑧ 放射線リスクに関する教育
⑨ 国内の原子力発電所の運転維持のための人材の確保
⑩ 原子力の国際展開に向けた人材育成の取組
⑪ エネルギー・環境問題の教育に関する取組
詳しくは、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/kettei/121127_jinzai.pdf
この見解について、原子力人材育成ネットワークは関係者によるワーキンググループを設けて対応を検討することとなりました。
運営委員会では、このほか、ネットワークを通じた原子力人材育成の取組みについて、平成24年度報告と平成25年度計画が了承されました。
平成25年度の国際連携プログラムのひとつとして、第2回IAEA原子力マネジメントスクールが本年5月27日(月)~6月10日(月)の2週間、東京(前半)と東海村(後半)で開催予定であり、日本人、外国人それぞれ約20名の参加者(聴講生)を目下募集中です。申込期限は、5月8日(水)です。詳細は、原子力人材育成ネットワークホームページまたは事務局安藤ando.yoko@jaea.go.jpまでお願いします。
原子力人材育成ネットワークの参加機関数は、現在、大学、高専、研究機関、電力会社、メーカー、立地地域、国等の67機関です。大学どうしあるいは教育機関と研究機関・産業界等の連携協力を通じて、原子力教育・訓練の効果的、効率的、戦略的推進を図っています。また、共通基盤整備のため、人材育成情報を集約したデータベースを構築しています。ネットワーク活動の詳細については同ホームページをご覧ください。
当協会は4月3日開催の原子力委員会で、原子力産業セミナー2013の開催結果について報告しました。
今年度で7回目の開催となる同セミナーは、2014年度卒業の大学生・大学院生を主な対象とした合同企業説明会で2月2日に東京、同9日に大阪で開催。 来場学生数は、東京が265人(昨年度223人)、大阪が123人(同273人)、参加企業・機関数は東京が21社(同29社)、大阪が13社(同24社)でした。
当協会では、参加企業・機関数が大幅に減少した原因について、昨今の原子力産業を取り巻く厳しい状況の中、新卒採用を控えたり、採用計画の目途が立たなかったりすることが多くなっていることを挙げたほか、大阪会場での来場学生数の減少については、参加企業・機関数の減少、原子力発電所の再稼動の目途が立たない等の理由により、原子力に対するイメージダウンが主に影響していると説明しました。
また、この状況が続くと原子力産業の技術維持が難しくなり、国全体の損失にもつながりかねないことから、産官学の総力を挙げて既存の原子力発電の安全な利用や廃炉・除染等で長期にわたり継続して新しい人材が必要であることを訴えていく必要性を強調しました。
3月14~15日、スロバキア・ブラチスラバにて、スロバキア原子力監督局および在スロバキア日本大使館との共催で『原子力安全国際シンポジウム』が開催され、服部理事長が福島事故後の日本の状況について説明しました。
本シンポジウムは、福島原発事故の経験と教訓を踏まえつつ、日本及び中欧各国の専門家が原子力安全に関する報告・意見交換を行うことにより、原子力平和利用の安全性向上に一層資するための情報と知識を共有するため開催されたものです。
日本からは、広瀬研吉・東海大学特任教授と服部理事長が参加し、広瀬教授からは、福島第一原子力発電所事故の詳しい状況と、事故後の対策および今後の廃炉計画等について講演がありました。
服部理事長からは、「福島事故後の前進」というタイトルで、福島第一事故後のオンサイトおよびオフサイトの現状や、日本の原発の状況、および日本のエネルギー政策の動向と今後の課題などについて講演を行いました。
講演後の質疑応答では、日本で原発が停止している状態で電力供給に問題がないとなると、ドイツに原子力無しでやっていけるというシグナルを送ることになるとの懸念が述べられました。また、福島の除染の目標および避難者の帰還や、社会経済的影響に対する事故前の考慮、廃炉に向けた国際協力の状況等について質問がありました。
その後、スロバキア電力会社、IAEA、EC、スロバキア原子力学会から原子力安全向上の取組について講演があったほか、翌日のパネルディスカッションでは、スロバキア、チェコ、スイス、ポーランド、ウクライナ、IAEAの規制当局や研究者が参加し、ストレステストの結果を受けた各国の行動計画の実施状況等について議論を行いました。
パネル討論では、服部理事長より、発電所の安全確保には事業者が一義的な責任を負っており、福島事故は規制要件に従っていただけだったということが問題で、事業者はもっと高い水準の安全を追及すべきであること、そのため昨年11月に原子力安全推進協会(JANSI)を設立し、規制だけでなく事業者も変わったことを説明し、国際社会にオープンに協力して行きたい旨述べました。
服部理事長講演 | パネルディスカッション |
記者会見 | 広瀬教授質疑応答 |
当協会は3月18日、ベルギー・ブリュッセルにて、FORATOMとの共催で『Japanese Day』を開催し、服部理事長から福島事故後の日本の状況について説明しました。
『Japanese Day』は3部構成で、第1部はEU関係者、第2部はマスコミ、第3部はFORATOMメンバーが参加し、服部理事長の講演の後に、各々質疑応答および意見交換を行いました。
服部理事長からは、「福島事故後の原子力発電」というタイトルで、福島第一原子力発電所事故の経緯、現状、今後の廃炉計画を説明するとともに、オフサイトの状況として、避難区域や避難者数、賠償、除染、廃棄物管理等の状況について説明しました。その後、事故の原因と教訓や、日本の原発の状況および原発停止による影響、日本のエネルギー政策の動向と今後の課題などについて、個人的見解を交えながら説明しました。
参加者からは、主に、安全文化をどう構築していくか、日本の新しい規制はどうなるか、国民の信頼をどう回復していくか、福島第一の事故処理の工程は順調に行くか、国際協力をどう進めていくか、再稼働の見通しはどうか、原発停止が続くと安定供給はどうなるか、日本の燃料サイクル政策はどうなるか、福島事故後の避難をどう進めたか、帰還の見通しは、等の質問が寄せられ、日本のエネルギー政策の行方と、安全文化の再構築への強い関心がうかがえました。
服部理事長(左)とポンセレFORATOM事務局長(右) | EU関係者との会合 |
マスコミとの会合 | FORATOMメンバーとの会合 |
服部理事長講演風景 | テレビインタビュー風景 |
当協会は3月18~22日の日程で、英国の新規原子力プロジェクトに関する調査団をロンドンへ派遣しました。ロンドンでは英国の原子力新規建設をテーマにした会合「NNB2013」にも参加。その他関係機関との個別会合や、EDFエナジー社のサイズウェルB原子力発電所を訪問しました。
NNB2013会期中は、エネルギー気候変動省がEDFエナジー社のヒンクリーポイントCプロジェクト(EPR×2基)に対し開発合意書(DCO)を発給のニュースが流れ、同社が新規建設に必要な許認可をすべて取得した瞬間に立ち会うことが出来ました。
同社はこれまでに欧州委員会承認(昨年6月)、サイト許可取得(昨年11月)、EPRの包括的設計審査完了(昨年12月)など数々の許認可手続きをクリアし、許認可関連最後の手続きとなるDCO発給の行方が注目を集めていました。
ヒンクリーポイントCプロジェクトの完成予想図 |
NNBでスピーチした同社のカドゥ-ハドソン新規建設担当役員は、DCO取得により「プロジェクトの準備は整った」と指摘。同時に、「行使価格(政府による電力の買い取り価格)と長期固定価格買取制度(CfDs)に関する財務省との協議は継続中であり、合意に達しない限り最終決定は下せない」と強調しました。
行使価格ならびにCfDsは、プロジェクトの利益率を算出する上で重要な要因。同社としても、利益率を示せない限り、新たな出資社との協議のみならず社内の取締役会に掛けることすら出来ない。なお今後のプロジェクトのスケジュールについて同氏は、政府と協議中であることを理由に言及を避けました。特に行使価格をめぐる協議はかなり「激しい」(同氏)交渉になっているようだ。ただしデイビー大臣は議会で「間もなく行使価格の交渉が終了する」との楽観的な見通しを示しています。
NNBには英国内外の原子力産業関係者300名近くが参加。19日午後一時過ぎにデイビー大臣の発表が始まると、会議場内のスクリーンがBBCのライブ映像に切り替わり、場内は騒然となりました。会場にはDECCのJ・ヘイズ閣外大臣も駆けつけ、DCOの発給を産業界に報告しました。
原子力の新規建設により、エネルギー・セキュリティの確保や気候変動の防止だけでなく、新たな雇用の創出や落ち込んだ産業界の技術レベル回復を図りたい英国の雰囲気が十分に伝わってくる光景でした。
議会でDCO発給を宣言するデイビー大臣のライブ映像に沸き立つ英原子力産業界 |
□「原子力発電所の進展に関する2013年国際会議(ICAPP2013)」(韓国・済州島開催)で服部理事長が講演
原子力発電の進展を知的な対話と友好なネットワークにより話し合う国際会議「 ICAPP」の2013年大会が4月14日から18日にかけて、韓国の景勝地済州島で開催され、基調講演セッションで、当協会の服部拓也理事長を含む5人が講演しました。今大会は、韓国原子力学会(KNS)主催、米・日・仏各国の原子力学会の共催。基調テーマは、「原子力発電:自然豊かな将来のための、安全で持続する選択」で、事前登録者で約650人(24カ国)を数えました。
「ICAPP」は、第1回が2002年に開催され、韓国での開催は2005年に次いで2回目。今回のICAPP大会は、韓国原子力産業会議(KAIF)とKNSの第28回合同年次大会との併催の形となり、また、原子力展示会も併せて開かれ、29ブースに16企業(外国企業では露国営原子力企業ROSATOM、米WEC社、東芝、仏AREVA社)が参加しました。
4月14日(日)夕方の展示会テープカット後の韓国産業界首脳のブース訪問 |
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開会後の記念撮影。前列左から仏学会ジョリー専務理事、服部理事長、米学会ホフマン副理事長、リーシング世界原子力協会理事長 |
服部理事長の講演は、「原子力発電の持続可能な開発」と題するもので、冒頭、今なお15万人にも上る人々が不自由な避難を強いられていることに触れた上で、福島第一原発事故の技術的またシステム上の原因、その復旧に国際協力が果たす役割、事故が世界のエネルギー供給に与えた影響、安倍新政権が検討中のわが国のエネルギー・ミックッス(各種エネルギー供給源の構成組合せの最適化)に関わる分析と問題提起を行いました。
服部理事長の講演時の会場風景 |
開催国の韓国では、2012年末の総発電設備量8,240万kW中の2,070万kW(25.1%)を、また総発電量5,045億8千万kWh中の1,503億3千万kWh(29.8%)を原子力が占めています。
また、エネルギー輸入が94%を占める資源小国の韓国の経済発展を原子力発電が支え続けて来たという事実と、また新鋭国産炉APR-1400開発・輸出の成功が韓国の強い自信の源泉になっていることもあり、韓国の原子力産業関係者が、国民の原子力発電への支持回復に大きな自信をもっている雰囲気が韓国の発表からも感じられました。
なお、ICAPPの技術セッションでは、中小型炉、次世代発電炉、核燃料サイクル、人材育成、核不拡散等が討議されました。
ICAPP野外晩餐会での韓国の伝統舞踊 |
□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )
*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。
・第8回 原産会員フォーラム(全体会合)開催について(4/19)
・「Vieuws TV」による服部理事長インタビュー(英語版)(3/29)
・プレスリリース 「原子力発電に係る産業動向調査2011」の概要報告(3/28)
・福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等の状況 (随時)
・福島原子力発電所に関する環境影響・放射線被ばく情報 (随時)
・福島地域・支援情報ページ (随時)
地元自治体の動きやニュース、地元物産・製品等の情報を掲載中
・「日本の原子力発電所(福島事故前後の運転状況)」を掲載 (随時)
□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/ )
・【日本の原子力発電所の運転実績】2013年3月分データを掲載(4/5)
□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/ )
・Atoms in Japan:英文原子力ニュース(AIJ) (随時)
・Fukushima & Nuclear News (随時)
・Status of the efforts towards the Decommissioning of Fukushima Daiichi
Unit 1-4 (随時)
・Environmental effect caused by the nuclear power accident at Fukushima
Daiichi nuclear power station (随時)
[Information]
* "Lessons of Fukushima for Europe - Takuya Hattori, President of
Japanese Atomic Industry Forum" interviewed by Vieuws TV(3/28)
* Stress Test and Restart Status (随時)
* Current Status before and after the earthquake (随時)
* Operating Records of Nuclear Power Plants (随時)
* Developments in Energy and Nuclear Policies after Fukushima Accident
in Japan (随時)
* Trend of Public Opinions on Nuclear Energy after Fukushima Accident
in Japan (随時)
[福島事故情報専用ページ] 「Information on Fukushima NuclearAccident」 (随時)
[今井会長]
4/23~4/25 第46回原産年次大会(於:ニッショーホール)
[服部理事長]
4/5 インフラ輸出に係る政策懇談会(於:経済産業省)
4/11~4/16 ICAPP2013での講演・KAIF年次大会出席・現地施設視察に伴う韓国出張
4/19~4/22 IAB Meeting出席に伴うUAE出張
4/23~4/25 第46回原産年次大会(於:ニッショーホール)
4/26 東アジア原子力発電フォーラム出席(於:東海大学 校友会館)
[佐藤常務理事]
4/17 東北エネルギー懇談会総会出席のため仙台出張
4/23~4/25 第46回原産年次大会(於:ニッショーホール)
4/26 東アジア原子力発電フォーラム出席(於:東海大学 校友会館)
諸外国の原賠制度の特徴(4)
諸外国の原賠制度の特徴についてQ&A方式でお話します。
Q1.(損害賠償措置の義務付け) 諸外国においても我が国と同様に、原子力事業者は損害賠償措置を義務付けられているのでしょうか? |
A1.
・ 賠償措置は、ほぼ全ての国で原子力事業者に義務付けられており、多くの国では賠償措置額が責任限度額と同額とされています。
・ 賠償措置の方法は、多くの国で保険等による財務的保証による制度が採用されています。我が国のように、保険だけでなく、これを補完するために政府との補償契約が義務付けられている制度を採用する国は決して多くありません。
・ この他、高額の措置を行うために保険による措置と事業者同士が資金を出し合う形で資金調達を行う仕組みの措置が組み合わされている国もあります。
【A1.の解説】
我が国では原子力事業者に1200億円(但し核燃料の加工・運搬・貯蔵等の場合には少額賠償措置が認められている)の賠償措置が義務付けられており、賠償措置は原子力損害賠償責任保険及び原子力損害賠償補償契約もしくは供託により行うことになっています。
諸外国においても、ほぼ全ての国で賠償措置が義務付けられており、その金額はほとんどの国において原子力事業者の責任限度額と同額とされています。これにより、事故の際には賠償措置による資金を賠償に充てることで確実に責任を果たすことができるようになっています。
例外的に韓国においては、責任限度額3億SDR(約369億円)に対して賠償措置額が500億ウォン(約37億円)となっていますが、その差を埋めるための国による援助が規定されています。また、ベトナムでは、原子力損害に関わる賠償措置額は現在のところ規定されていません。
一方、賠償措置の方法は国によって違いがあります。ほぼ全ての国において保険その他の財務的保証により措置を行うことが規定されており、実際にもほとんどの国において保険による措置が行われていますが、それに加えて、保険等が機能しない場合に備えて政府と補償契約を結ぶ措置や、高額の措置を行うために保険による措置と事業者同士が資金を出し合う形で資金調達を行う仕組みの措置が組み合わされている国もあります。
・ 保険に加えて、保険の免責事項を補完するために、政府との契約が賠償措置として義務付けられている国(例)
日本、韓国
・ 第一段階に保険、これに加えて第二段階に事業者同士が資金を出し合う賠償措置を義務付けている国(例)
米国、ドイツ
米国では第一次損害賠償措置として保険により3億7500万ドル、第二次損害賠償措置として事業者間相互扶助制度により約122億1948万ドル、合計約125億9448万ドル(約1兆68億円)の賠償措置が義務付けられています。ドイツでは第一層損害賠償措置として保険により2億5000万ユーロ、第二層損害賠償措置として自家保険により22億5000万ユーロ、合計25億ユーロの賠償措置が義務付けられています。
Q2.(損害賠償措置が機能しない場合の措置) 損害賠償措置が何らかの事由により機能しなかったために、賠償資金が賠償措置額に不足する場合、原子力事業者はどのように被害者への賠償資金を確保するのですか? |
A2.
・ 多くの国では、損害賠償措置は保険やその他の保証と規定されており、我が国のように賠償措置として保険契約を補完するために政府と補償契約を結ぶ仕組みにはなっていません。
・ 保険やその他の保証による措置だけでは、実際に起きた原子力事故の態様によっては、保険約款上の免責事項などに該当し、保険金等が支払われない場合も生じます。
・ そのため、多くの国では賠償措置による資金が原子力事業者の賠償に不足する場合に備えて、国がバックアップする仕組みを規定しています。
・ 責任限度額までの賠償措置が義務付けられていない国や、責任限度額が無い(無限責任)国においては、賠償措置額を超える賠償についても、国による援助が規定されています。
【A2.の解説】
我が国の損害賠償措置は、民間の原子力損害賠償責任保険が原則となっています。そのため、保険で填補されない地震・津波・噴火、10年後の賠償請求、正常運転による場合の原子力損害に対処するため、原子力事業者は政府と原子力損害賠償補償契約を行うことになっています。同様の仕組みは韓国などで採用されているものの、ほとんどの国では賠償措置は保険契約のみで行われており、賠償措置として保険を補完するために政府と補償契約を結ぶ仕組みにはなっていません。
このように、民間の保険やその他の保証による賠償措置の場合、契約上の免責事項に該当する場合や、何らかの事情(例えば引き受けた者の資金不足など)により保険金等の支払いが為されない場合には保険金が支払われず、賠償措置が機能しないことが考えられます。賠償措置が機能しなければ原子力事業者の経営に深刻な影響が及ぶばかりか、被害者が充分に賠償を受けられなくなってしまうことになります。
そのため、多くの国では賠償措置による資金が原子力事業者の賠償に不足する場合に国がバックアップする仕組みを規定しています。
保険やその他の保証による措置が機能しない場合の規定は、おおよそ以下のように分類されます。
・ 保険及びこれを補完する政府との補償契約が賠償措置に組み込まれている国(例)
日本、韓国
・ 国が不足分を賠償措置額まで負担する国(例)
フランス、ドイツ、スイス(事業者から負担金を徴収する)、マレーシア
・ 国が事業者に何らかの援助を行うことを規定している国・地域(例)
援助方法を規定:台湾(賠償措置額まで貸付)、米国(当局が資金を確保、事業者が返済する)何らかの対応を規定:
中国、イギリス、ポーランド
・ 規定に明示されていない国(例)
インド、ロシア、ベトナム、インドネシア
なお、多くの国では原子力事業者の責任限度額と賠償措置額は同額ですが、責任限度額までの賠償措置が義務付けられていない国や、原子力事業者が無限に責任を負う国においては、賠償措置額を超える賠償についても、国によるバックアップが規定されています。
・ 責任限度額までの賠償措置が義務付けられていない国(例)
韓国・・・国が必要な援助を行う
・ 責任限度額が無い国(例)
日本・・・損害額が賠償措置額を超え必要と認められる場合に国が必要な援助を行う。
ドイツ、スイス・・・賠償措置額を超え、事業者の資金が賠償に足りない場合は国が資金の配分方法を決定する。
(表をクリックすると、拡大表示されます) |
バレエ見に行きたい
◎「原産協会メールマガジン」2013年4月号(2013.4.26発行) 発行:一般社団法人 日本原子力産業協会 情報・コミュニケーション部(担当:木下、八十島) 〒105-8605 東京都港区虎ノ門 1-2-8 虎ノ門琴平タワー9階 TEL: 03-6812-7103 FAX: 03-6812-7110 e-mail:information@jaif.or.jp |
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