原子力発電による温室効果ガス排出量削減への期待

2016年12月27日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 京都議定書に代わり、2020年以降の国際的な温室効果ガスの削減の枠組みを示す「パリ協定」が11月に発効した。パリ協定は気候変動枠組条約に加盟する196カ国のすべてが参加する初の枠組みであり、世界共通の長期目標として、産業革命前からの気温上昇を2℃より十分低く抑えるとともに、1.5℃未満に抑える努力を追求するという高い目標を掲げている。わが国もCO2排出量削減目標として「2030年度に2013年度比26%削減」を掲げてパリ協定を批准したことから、この目標を達成して国際的な責任を果たさなければならない。

 このような中で、今般、環境省は2015年度の国内の温室効果ガス排出量(速報値)が、CO2換算で前年度比3%減の13億2,100万トンであると発表した。前年度からの減少要因としては、電力消費量の減少や電力の排出原単位改善に伴う電力由来のCO2排出量の減少に加え、産業部門や運輸部門におけるエネルギー起源のCO2排出量の減少などが挙げられるとしている。エネルギー起源のCO2排出量は温室効果ガス総排出量の約90%を占めており、その約40%が発電に伴うものであることから、削減目標を達成するためには、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の稼働そして火力発電所の高効率化や燃料切り替え等により、発電源を如何に低炭素化するかが鍵となる。

 そこで原子力発電所の再稼働により減少したCO2排出量に着目してみると、図1に示すとおり、再稼働したプラントが2015年夏以降3基に留まった結果、発電電力量全体に原子力が占める割合は1.1%と極めて少ないものの、図2に示すとおり、発電分のCO2減少量2,600万トンのうち原子力発電による減少量は約400万トンと見積もられ、その寄与割合は約15%に及んでいる。このことから、原子力発電によるCO2排出量の削減効果が如何に大きいかが判る。

 わが国の2030年度のCO2 削減目標はS+3Eの確保の観点から検討されたエネルギーミックスに依拠するもので、大幅な省エネに加え、ゼロエミッション電源の割合を44%(再生可能エネルギー22~24%、原子力20~22%)として算定されたものである。この目標を達成するためには、一基あたりの発電容量が大きく、安定的な電源で、かつCO2排出量削減効果の大きい原子力発電の果たす役割は大きい。現状再稼働している原子力発電所の数は極めて少ないものの、引き続き審査が順調に進んで再稼働していく原子力発電所の数が増加し、温室効果ガス排出量低減がさらに進むとともに、エネルギーの安定供給が確保されることを願う。

以 上

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