福島県における避難指示解除にあたって~住民の帰還に向けた環境整備の加速化に期待~
一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男
東日本大震災および福島第一原子力発電所事故から6年が経過したが、3月31日に飯舘村、浪江町および川俣町山木屋地区内で、また4月1日には富岡町で、それぞれ避難指示解除準備区域および居住制限区域が解除された。この解除をもって避難指示等が残るのは、福島第一原子力発電所が立地する双葉町、大熊町の全域と、5市町村に設定されている帰還困難区域となった。2013年8月に避難指示区域が設定されてから約3年8箇月が経過し、避難対象者数は約8.1万人から約2.4万人に、避難指示区域の面積は約1,150km2から約370 km2に、それぞれ約3割まで減少した。
(参考:第45回原子力災害対策本部会議 配布資料 資料3)
政府は残る帰還困難区域の復興事業について、昨年末に「原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針について」を閣議決定したが、その中で、可能なところから着実かつ段階的に、一日も早い復興を目指して取り組んでいくこととしている。帰還困難区域の取扱いは、福島の今後の復興に関わる重要かつ難しい課題であり、地元と十分に議論しつつ、計画的に進められなければならない。
これまで各自治体では、ふるさとの復興と心の復興を掲げ、住民の方々の安心に繋がるよう、インフラ整備とともに生活支援策の充実にも努力されている。すでに2015年9月に全町避難指示解除となっていた楢葉町では、2017年度から小中同一校舎での授業が再開される。また、公共交通機関の復旧についても、JR東日本は、浪江町の避難指示解除に合わせて常磐線小高~浪江間の運転を4月1日に再開した。さらに富岡~竜田間については、本年10月頃に運転を再開させることとしている。
一方、様々な取組みを行われている自治体の方々から、置かれた状況が違う中で以前のようにそれぞれの市町村の医療や商業施設などの機能をつなぐにはどうしていくべきかといった課題があると聞く。さらに、自治体が取り組む心の復興の一つとして、ふるさととの繋がりを保ち続けるためにも文化財や暮らしを物語る資史料の発掘・整理が必要との話題も耳にする。
このたびの4町村の一部避難指示解除により、こうした課題を含め、生活環境の整備が進み、かつての地域の日常の暮らしが少しでも早く取り戻せることを期待したい。
当協会としても、風評被害をはじめとする様々な課題があることを忘れず、引き続き、地域の皆様の声を大切に、地元に寄り添った活動に継続して取り組むことはもとより、復旧・復興に向かっている福島の現状を国内外に広く発信していく所存である。
以 上
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