米国ユタ大学原子炉研修に初めて若手技術者を派遣して

2017年11月28日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 当協会は、元会長 向坊隆氏の遺功を後世に託すべく、原子力分野において国際的な視野を持ち、国内外で活躍・貢献できる日本人若手リーダーの育成に資する目的で、「向坊隆記念事業基金による国際人育成事業」(以下、本事業)を2008年度より実施している。本事業では、これまでの9年間で、将来を嘱望される若手社員、技術者、研究者等36名を「世界原子力大学・夏季研修(WNU-SI)」に派遣してきた。
 これに加え、米国州立ユタ大学研究炉(100kW TRIGA炉)を使った原子炉研修への若手技術者派遣に対し、今回初めて本事業による支援を行った。この研修は、岡山大学 耐災安全・安心センターがユタ大学および国際原子力機関(IAEA)と協働で開発したものであり、学生と社会人等が一堂に会し、意見を交換しながら学ぶことのできるプログラムとなっている。昨年度に当協会職員を含む日本の産業界の若手技術者2名が同大学におけるパイロット研修に参加、研修内容の改良に貢献し、本年度の本格実施となった。去る11月6日(月)~10日(金)、同大学で実施された研修には、日本から、原子力発電所の運転、保守、設計等を担当する5社5名の若手技術者を本事業により派遣した。

 WNU-SIは、各国行政官や各企業の次期リーダー育成を目的とし、講義はマネジメントに係るものが多いのが特徴である。これに対し、ユタ大学研修は、緊急時対応能力の向上を主たる目的とし、原子力発電の安全文化、過酷事故対応等の講義のほか、シミュレータ実習、研究炉の起動・停止(緊急時対応含む)等の運転操作の実践演習に重点が置かれた技術者向け研修である。この研修では、原子炉運転により得られる実機データとシミュレータ結果の比較をし、討議することで、原子炉の挙動に対する理解を深めることも可能である。また、国際的な人的ネットワーク形成もできる点においても本研修に参加する意義は高い。

 本年度の研修参加者からは、「シビアアクシデントに関する米国プラントの対策について知見を深めることができた」「日米の参加者と様々な意見交換をすることで自身の視野が広がり、企業や国を超えてネットワーク構築ができ、大変有意義であった」等の感想、意見があった。また岡山大学の担当教官からは、「IAEAを中心とした過酷事故対策ガイドラインの開発議論に日米の技術者の積極的な参加を期待する」との声もいただいている。

 本研修は、高度な原子炉知識や、より高い安全意識を持つ国際人材が養成できる場として、有意義な研修プログラムであり、今後も企業・機関の積極的な参加とプログラムの改善への貢献を期待したい。
当協会は今後も本研修への参加支援を向坊隆記念国際人育成事業として実施してまいりたい。

以 上

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講義風景

研究炉を使って起動・出力上昇・停止の一連の流れを実習

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