[原子力産業新聞] 1999年11月11日 第2012号 <1面>

原子力災害対策特別措置法案
首相が「緊急事態宣言」 事業者は防災組織を設置

科学技術庁と通産省が検討している「原子力災害対策特別措置法案」(仮称)の要綱骨子案が5日、明らかになった。緊急事態となった場合、内閣総理大臣が「原子力緊急事態宣言」を出し、臨時に総理府に「原子力災害対策本部」、オフサイトセンターに「原子力災害現地対策本部」が置かれることになる。

法案は第1章「総則」、第2章「原子力災害の予防に関する原子力事業者の義務等」、第3章「原子力緊急事態宣言及びこれに伴う国の組織等」、第4章「緊急事態応急対策の実施等」、第5章「原子力災害事後対策」、第6章「雑則」の6章で構成。

第2章の原子力事業者の義務等では、事業者は事業者防災業務計画、防災組織(防災管理者の専任も含む)などを作成・設置し、主務大臣に届ける。防災管理者は「一定の現象発生」の場合には直ちに市町村長、都道府県知事及ぴ主務大臣へ通報しなければならない。また必要な放射線測定設備や防災資機材の設置も義務づけられる。

原子力災害対策本部は内閣総理大臣を本部長とし指示を出すが、現地本部長はその権限の一部の委任を受ける。本部長は自衛隊の派遣も要請できる。またオフサイトセンターには、情報の交換及び緊急事態応急対策について相互に協力するため「原子力災害合同対策協議会」を組織する。さらに科技庁と通産省に「原子力防災専門官」を置き、原子力事業所に配置することも定めている。

一方、原子力災害事後対策としては、国・地方自治体・事業者・指定公共機関は、居住者等に対する健康診断や心身の健康に関する相談の実施、放射線量の調査等、放射線物質による汚染され、または汚染されている恐れがあることに起因する商品の販売の不振等に対処するための広報等の対策をとることが定められている。また緊急事態応急対策、原子力災害事後対策等に要する費用の一部または全部を国が負担、補助できるとしている。

科技庁と通産省は5日、原子炉等規制法の一部改正法案の要綱骨子案を公表した。

加工施設への定期検査の実施、現行の定期検査ではチェックしにくい保安規定の遵守状況について、国が定期的にソフト検査を行う。また両省庁に「原子力保安検査宮」を置き、こうしたソフト検査に従事する。

さらに現場における安全文化を高めるための規定の整備として、原子力事業者が核燃料物質の取扱等に関する保安教育を従事者に行う義務を定める。


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