[原子力産業新聞] 1999年11月11日 第2012号 <6面> |
[レポート] ドイツの最新「原子力事情」(2)電力市場自由化で先頭走るドイツ(全号つづき) 電力市場の自由化を受け、電気事業を中核とするVEBA社(プロイセンエレクトラ社の親会社)とVIAG社(バイエルンベルク社の親会社)の合併が浮上してきた。両社の合併交渉は、9月26日に合意に達し、来夏にも新会社が発足することになった。 新会社は、現在ドイツ第1位のRWEエネルギーを抜き、欧州全体でみてもEDF、ENEL(イタリア電力公社)に次いで第3位になる。新会社の中核となる事業は、エネルギーと化学の2部門。運転中の原子力発電所19基のうち、12基を所有・運転する。 このほか、国内第4位のエネルギー・バーデンビュルテンベルク(EnBW)社は今秋、4分の1にあたる株式の売却に踏み切る。この株式購入にはEDFをはじめ数社が応札、入札結果が注目を集めている。さらに10月にはRWE社とウェストファーレン合同電力(VEW社)の合併交渉が明らかになり、電力業界トップの座をめぐって、めまぐるしい動きが続いている。 脱原子力に懐疑的な発電所当局世論調査によると、ドイツ国民は新規原発の建設には反対するが、既存の原発の運転継続は認める傾向にある。訪問したブルンスビュッテルとブロックドルフの両発電所の広報担当官によると、両機が高い安全水準を保ち、税収や雇用面で地域の経済に貢献していることから、両発電所の周辺住民も運転継続を認めているという。 77年に運転を開始したブルンスビュッテルは、ドイツで6番目に古い原子力発電所で、連邦政府が掲げる早期閉鎖の候補にも上がっている。しかし、同発電会社の担当者は、「電力自由化が加速するなか、電気事業や地域経済への影響や地球温暖化防止効果を考えると、短期的な政府の脱原子力政策には応じられない」と述べた。 ブロックドルフでは、88年からMOX燃料の装荷を実施している。ドイツのMOX利用は、72年のオブリッヒハイムを皮切りに現在は10基で実施、1基が認可済み。実施当初は一部に強い反対もあったが、今では激しい反対運動はなく、現在は順調に実施されている。プロイセンエレクトラ社の運転管理担当者は「これまでの実績から見てMOX利用は技術的に全く問題ない」と説明してくれた。 政府与党が地方選で敗北シュレーダー政権は失業、財政赤字、社会保障など原子力以外にも多くの社会・経済問題を抱えている。同政権に対する国民の審判は、9月に行われた4つの地方議会選挙でSPDに連敗をもたらした。SPDは、ザールラント州(9月5日)とチューリンゲン州(9月12日)で与党の座をキリスト教民主同盟(CDU)に奪われ、ブランデンブルク州(9月5日)で過半数を確保できずにCDUなどとの連立を模索中。ザクセン州(9月5日)では得票率が10.7%にしか達せず、第3党に落ちるなど記録的な大敗となった。 これらの州には原子力施設がないため、脱原子力政策が選挙戦の争点にならなかったが、最大野党のCDUが州レベルで勢力を拡大することは、原子力にとってプラスとの見方が強い。さらに、州議会代表からなる上院で、CDUが過半数を占めることは「今後の原子力法改正の歯止めになる」と期待されている。 また、91年以来、CDU・SPD連立のベルリン特別市(州と同格)で10月10日、市議会選挙が行われ、SPDは連敗を更新した。ただ、第1党のCDUの得票数が過半数に達しなかったことから、第2党のSPDとの連立が継続すると見られている。今後の州議会選挙は、SPDと緑の党が与党のシュレスビッヒ・ホルシュタイン州で2000年2月、同じくSPDと緑の党のノルトライン・ウェストファーレン州で同5月に予定されている。それぞれ3基の原子力発電所とアーハウス使用済み燃料中間貯蔵施設を抱えており、原子力の是非が選挙戦の争点となる可能性がある。ブルンスビュッテル運転会社の担当者は、「シュレスビッヒ・ホルシュタイン州の脱原手力政策は連邦政府に委任された感が強く、州レベルでは失業や不況など経済問題が最大の争点であることから、次回選挙はCDUが12年ぶりに政権を奪回するだろう」との見方を示した。(おわり) 【花光圭子】
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