[原子力産業新聞] 1999年11月18日 第2013号 <2面> |
信頼・安全の議論開始長計第1分科会、規制強化に疑問の声も原子力委員会の長期計画策定会議第1分科会(座長・太田宏次電気事業連合会副会長、高原須美子氏<評論家>)は11日、第3回会合を聞き、国民の信頼感、安全と安心の確保について、今後3回程度にわたる議論を開始した。 会ではまず、弁護士の石橋忠雄氏が「原子力はアクセプタンスが不十分」と憂慮した上で、対話と相互理解の理念を基本とした制度を作り、「国民との距離を縮めていく」よう要望。また高レベル廃棄物処分問題を信頼確保に当たっての最大のネックと位置づけ、地下研究施設と最終処分場との区別を明確にする法制度整備などを求めた。加えて政策や計画の中断について、その中止・見直しを決める際には国民的視野に立った「チェックアンドレビュー」を行う必要性を、特に高速増殖炉開発について主張するとともに、これまでの事故時の行政庁・事業者等の対応を例に、問題箇所の生データの公表についても言及した。 これら意見に対して、情報公開についてはその必要は認めつつも、メーカーにとっては企業戦略上どうしても明かせないこともあるという声、また分かりやすい言葉で説明してもらうことを切望する声などが出された。 一方安全・安心については、トラブルごとに安全規制を強化することへの疑問を投げかけ、法体系の整理、安全文化の醸成を訴える意見や、安全性向上の代償として消費者への負担が増すのではという憂慮の声も上がった。 また、JCO臨界事故について桝本晃章東京電力常務取締役はまず、この20年で原子力発電所の基数が約4倍、設備容量が約6倍、原子力産業の従事者数が8割増と飛躍的に成長し、同時こ核燃料加工の国産化が進展したという背景を説明した。一方で、従事者の世代交代等により、その責任感にも変化が生じてきたことを推測し、この事故により社会一般の原子力開発への見方は一層厳しくなり、「事故原因の徹底究明と対策を講じることが信頼回復の第一歩」との認識を提示。具体的には国内の発電・燃料加工事業者等による「ニュークリアセイフティネットワーク」を設立し、安全文化を共有、事故の再発防止に努めていく動きがあることなどを紹介し、また「不安は知ることで解消される」として、正確な情報公開を促進し「言葉を使って」国民との接点を持つ重要性を訴えた。 河瀬一治敦賀市長も原発立地県の立場から、長計策定に当たって地域の声を反映させて欲しいと述べた。 なお会議では、議論のベースとして、岡本浩一東洋英和女学院大教授が「リスク認知の2つのプロセス」と題するプレゼンテーションを行っている。
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