[原子力産業新聞] 1999年11月18日 第2013号 <5面> |
[レポート] COP5と原子力独・ボンで開催「CDM として有効」、ICC 委員長強調、JCO 事故で逆風も国連気候変動枠組み条約第5回締約国会議 (COP5) が10月25日から11月5日まで、ドイツのボンで開催された。政府 (締約国165か国)、NGO 213団体、メディア関係257団体など、討約4200名の参加があった。COP5 の目標は、COP4 で採択された「ブエノスアイレス行動計画」に基づき、山場となる来年開催の COP6 に向けての道筋を決定することだったが、協議は当初期待されていた以上の進展が見られた。 COP5 では、京都メカニズムの制度設計、「京都議定書」の不遵守に関する問題、シンク (森林等による CO2 の吸収)、途上国の参加問題等について、COP6 での最終決定を目指した作業計画を決めた。京都メカニズムについては、2000年1月末までに COP5 での議論を踏まえた各国意見を提出することが決められた。また「京都議定書」の発効に関しては、遅くとも2002年までに発効すべきとの意見が多数を占めた。 ところで COP6 はオランダのハーグで2000年11月13日から24日まで開催されることになったが、その間、8月と9月に実施される2回の補助機関会合で、COP6 に向けて「議定書」関連事項の検討作業が図られる見通しだ。主要課題によっては、先進国間や先進国と途上国との間の意見の隔たりが依然大きいものもあり、これらの会合を通して調整が加速化されることが議長声明で求められている。 原子力については、JCO の事故の影響を受け、ドイツを始めとする欧州諸国や小島諸国から「地球温暖化対策技術から排除すべきだ」との否定的意見が表明され、また環境グループは、原子力事故の危険性を誇張した宣伝を展開し、京都メカニズムから原子力を除外するよう政府関係者にいたるところで圧力をかけていた。 また、ドイツのシュレーダー首相が会議の開会演説の中で、国内の原発閉鎖に改めて言及するなど、原子力に対する批判的な見解が目立ったが、それは欧州における、原子力撤退の風潮にも多分に影響されるという事情もあったようだ。 COP5 に合わせ日本原子力産業会議は、ポンで例年通り国際原子力フォーラム (INF) と連携し、温室効果ガスを排出しない原子力の利用を地球温暖化防止策の1つとして推進すべきだとするキャンペーンを展開した。INF は一昨年の COP3 の際に原産を中心に結束され、現在、ウラン協会、米国原子力エネルギー協会、欧州フォーラトム、欧州原子力学会、カナダ原子力協会、韓国原産、日本原産の計7団体より構成。 COP5 では具体的活動として、原子力の理解促進を狙った展示、イベントの開催、政策提言言文の頒布、政府関係者ならびに環境派との積極的な対話、国際商工会議所 (ICC) をはじめとする他の関連 NGO との連携等を行った。 特に今回は、本会議の場で NGO として INF の声明表明をする機会を獲得でき、原子力の重要性および可能性を広く訴えることに成功した。またメディア対応として、積極的にインタビューに応じたほか、原子力発電所施設訪問も実施し、原子力に対する理解の拡大を図った。 イベントとして、INF は11月2日の夜にディナー&ディベートを開催。途上国の政府代表団を中心に約60名の参加者をみるなど高い関心が示された。 冒頭に、モデレーターを務める米国原子力エネルギー協会のA.ハワード副理事長より挨拶があった後、ICC エネルギー委員会のJ.サンタフォルマ委員長が「地球温暖化問題と電力」というテーマで基調講演を行った。その中で、同委員長は原子力が CDM (クリーン開発メカニズム) として有効で決ることを強調した。引き続き南アフリカの電力会社 ESCOM のコンサルタントを務めるV.ゴベンダー氏より、南アのエネルギー需給状況と地球温暖化問題対策の説明、ESCOM が開発導入を進めている高温ガス炉の紹介が行われた。同氏は電力のほとんどを石炭火力に依存する南アでは、自国のウランの有効活用につながる高温ガス炉の導入は、温室効果ガスの削減に効果的であると強調した。 原子力関連のイベントとしては、他に米国原子力学会が、地球温暖化対策としての原子力を CDM における技術移転の側面から議論した。 COP5 での INF の活動は、COP4 でみられた原子力を評価する前向きな姿勢が一転し、批判的な雰囲気の中で進められた。JCO 事故が及ぼした影響は払拭できないものの、当原産としては事故の正確な情報の提供を図ると同時に、安全性を一層向上させながら日本の原子力開発は継続されることを主張することで、地球温暖化防止に向けた日本の努力を説明した。 |