[原子力産業新聞] 1999年11月25日 第2014号 <3面> |
[IAEA] 東海村臨界事故で暫定報告書を公表チェル事故との差異強調国際原子力機関(IAEA)は15日、東海村のJCO施設臨界事故調査に派遣した3名の専門家達による暫定的な実態調査報告書をとりまとめ、「ヒューマン・エラー、安全原則と基準の重大な違反および設計上の不備が原因と推測される」との分析結果を公表した。 同調査団はIAEAと日本政府の合意に基づき、10月13日から17日に現地を訪問。その時点で得られた技術情報、放射線測定結果などをもとに同施設での作業手順、事故の経緯、環境モニタリングの結果、実際に取られた緊急時対応措置、従業員および周辺住民の被害状況を含む環境影響、推測される原因などを35頁にまとめている。現地では同調査団の帰国後も原子力安全委員会が詳しい調査を継続していたことから、IAEAは同報告書の結論が暫定的な情報に基づくものであり、被爆者の数や程度などは特に、今後新たに判明する事実によって改訂される可能性があることを強調した。 そうした性質を踏まえた上でIAEAは冒頭の緒言で、今回の事故が86年のチェルノブイリ事故のように広大な地域で環境汚染を引き起こす種類のものではなかったと断言。敷地外へのリスクがほとんどなくなった時点でも、周辺数百メートル区域の住民の避難と10キロメートル以内の住民に屋内待避が勧告されたことを明記したほか、深刻な産業事故である今回の出来事から得られる教訓は他の国々や産業にとっても重要であり、日本政府の要請があれば国際相互審査を実施する用意があることも付け加えている。 同事故の原因としては、ヒューマン・エラーと安全原則や基準の重大な違反と設計上の不備が考えられると指摘。放射性物質の多量の放出に至らなかった点から「汚染」というよりは「照射」事故であると強調しており、施設内における規制体制、安全手順および安全文化の係わリ合いによって発生した可能性が高いとの判断を示した。 調査チーム独自の確認事項としては、JCO施設建屋が構造上、大きなダメージを受けていないこと、敷地外の放射線レベルが正常値であること、また、同施設内に不法な運転マニュアルが存在し、深刻な被曝を受けた3名の従業員のうち1名は認可されていない手順を実行していたことを挙げた。 同報告書はまた、同施設で臨界事故防止を目的とした公式の作業手順を96年11月に規制当局の許可なく変更したことがステンレス製バケツでの酸化ウラン溶解につながったと説明し、このような作業が事故の起こる前にもしばしば行われていた事実が発見されたと指摘。さらに悪いことには、臨界事故を防ぐように設計されていないタンクに硝酸ウラニル液が注ぎ込まれていたことから、「作業には明確で特別な資格基準も訓練要項も定められていなかった」と伝えている。 排気システムからの放射性ガス放出について同報告書は、9月30日午前10時35分から翌日の6時30分までの間に4.0〜4.5ミリシーベルト(mSv)/時だった中性子線が検知可能以下の値に、また、0.84mSv/時だったガンマ線は0.001mSv/時に下がったことを明記。10月15日現在の被曝者数は69名で、事故当時に従業負がつけていたフィルム・バッジ22個はガンマ線で0.1mSvから最大6.2mSvの値を示し、その多くは.01〜1.0mSvの範囲内にあったことを明らかにしている。
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