[原子力産業新聞] 1999年12月2日 第2015号 <4面>

新刊抄

「原発国民世論-世論調査にみる原子力意識の変遷」 柴田鐡治・友清裕昭共著

原子力に対する国民の意識は今もって定着せず漂っているように思われる。1950年代半ばから歴史を刻んできた我が国の原子力開発を、その時々の国民はどのように見てきたのか。

こうした視点から原子力を見てみたい人にとって、各種の機関が行ってきた世論調査の推移を体系的にまとめ、その時代の状況を踏まえた解説書があればと願うものである。今までこのような本は見当たらなかったといってもよいが、ここにきてやっと読者の要望に沿った本が出版された。本書がそうである。

2名の著者はいずれも朝日新聞の科学部長を務めた元ベテラン記者で、原子力問題に長く関わってきた、著者はまず、原子力を巡る世論調査はどの位あるのか調べたそうであるが、実はそれほどないという。それでも他社のものもかき集め、それを基に年代毎に原子力の意識の変遷をまとめあげた。

本書の構成は、1章から4章までが「バラ色の50、60年代」、「反対が生まれた70年代」、「反対が強まった80年代」、「不安拡大の90年代」、という年代別に追った記述。いずれも世論調査を基に分析している。第5章は「メディアの動向」、第6章「世界各国の世論」と続いている。世論調査データの収集から、その分析など相当の労力を費やしたことが窺い知れる内容だ。本文中の鋭いコメント等はPA担当者ばかりでなく、原子力関係者にとって貴重な言葉でもある。

A5判、202頁、定価1,800円(税別)。ERC出版(電話 03-3479-2150)。


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