[原子力産業新聞] 1999年12月9日 第2016号 <3面>

スウェーデン、バーセベック1号機を閉鎖

政府、補償総額は、59億クローナ
2号機の閉鎖時期は未定

バーセベック原子力発電所(各61万5,000キロワット、BWR2基)の所有者であるシドクラフト社とスウェーデン政府および国営電力であみヴァッテンフォール社との間で、同発電所1号機の閉鎖に伴う補償協定がまとまり、11月30日午後、同炉は24年にわたる操業に終止符を打った。残った同2号機の閉鎖時期に関しては明らかにされていないが、同発電所を運転していたバーセベック・クラフト社と、ヴァッテンフォール社が所有するリングハルス原子力発電所(90万キロワット級軽水炉4基)の運転会社を合併させ、この新会社の所有権をヴァッテンフォール社とシドクラフト社が持ち株会社として分け合うことになった。政府は今後、新会社に対する補償金として総額59億クローナ(676億円)を支払う予定だ。

この合意に達するまでの3者の最終協議は11時間にも及んだ。この協定によりシドクラフト社は閉鎖による発電量の損失分をヴァッテンフォール社の発電電力で受け取る一方、新会社のために電源設備の一部を手離すヴァッテンフォール社は総額57億クローナ(741億円)の補償を受けることになった。このうち26億5,000万クローナは4年間で政府から現金で支払われるほか、同2号機による発電コストがリングハルス発電所のコストより高いことから、差額として毎年1億1,300万クローナがシドクラフト社から支払われる。政府はまた、2号機だけの操業に伴うコストの上昇分や1号機の廃止措置費用も追加で負担する取り決めであるため、国側の支払い総額は59億クローナに達すると見積もられている。

新会社については株式の74.2%がヴァッテンフォール社の所有となり、バーセベック2号機が発電する電力の74.2%も同社の取り分となる。シドクラフト社の株式シェアは同2号機が1号機と同様、政治的な理由で閉鎖された場合、30%まで増加されることになっており、その際、ヴァッテンフォール社もまた政府から追加の財政補償を受ける。

今回の協定内容についてヴァッテンフォール社の理事会はすでに同意しているが、シドクラフト社では今月22日に予定されている特別株主総会で票決にかけなくてはならない。また、この補償協定の正式な発効は来年の春にスウェーデン議会が正式に批准してからのことになる。

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なお、シドクラフト社の懸命の努力にも係わらずバーセベック1号機が炉寿命半ばにして閉鎖に追い込まれたことについて欧州原子力産業会議連合(フォーラトム)は声明を発表。この閉鎖は1980年の国民投票結果に基づく純粋に政治的な理由によるものであると改めて指摘し、同炉の安全性や経済性、環境保全の観点からはまったく正当化できないこと、スウェーデン国民の意志に反するだけでなく、納税者および環境に対して過酷な重荷を背負わせることになったと強調した。

フォーラトムはまず、同炉の閉鎖は安全で信頼性の高い、かつ環境に優しい電源の損失を意味すると指摘。同発電所の2基だけで98年の発電電力量は83億キロワット時に上り、スウェーデン南部地方の電力需要の6割を賄っていた点に言及した。

また、同炉の閉鎖に伴いデンマークから石炭火力発電による電力の輸入を余儀なくされるほか、年間300万トンの石炭が炊き増しされるだろうと予測。このことはスウェーデンのC02排出量を10%上昇させ、COP3の京都議定書における目標数値を達成することは不可能だと断言した。フォーラトムはさらに、今年の夏に実施された最新の世論調査結果に触れ、国民の82%が既存原子炉12基の運転継続を望むなど、原子力の継続利用が国民の強い支持を得ている事実に注意を促した。


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