[原子力産業新聞] 1999年12月16日 第2017号 <1面>

民間団体「NSネット」発足

電力・メーカなど35企業等、安全向上めざし活動
理事長に牧野昇氏

原子力業界全体で安全向上を図る民間団体、「ニュークリアセイフティーネットワーク(NSネット)」の設立総会が9日、太田宏次電気事業連合会会長をはじめとする設立発起人および、会員となる電力、原子力産業関連会社、研究機関など35企業・団体の代表ら計64名の出席のもと、東京・千代田区のホテルで開催された。総会では理事畏に牧野昇三菱総合研究所相談役が選出されたほか、合計で13名の役員も決定。終了後の記者会見で牧野理事長は「今後のエネルギーは、どうしても原子力をベースとしなければならない。そのために使命感として理事長を引き受けた」と就任の抱負を述べた。NSネットは原産会議、原文振などとも連携し、安全活動を展開する。

設立総会の冒頭、発起人代表の太田電事連会長は、NSネットの設立にいたる経緯、主旨などを説明した後、出席した会員に対して「安全なしに原子力は成り立たない。積極的に活動に参加していただきたい」と挨拶した。

引き続き総会では、役員選出ほか組織体制などの協議が行われ、牧野昇三菱総合研究所相談役が理事長に選任されたほか、10名の理事、2名の監事を決定。合わせて事務所を東京・千代田区大手町に設置し、当面は原子力産業に携わる企業および研究機関などの自主参加による民間主体の任意団体として、事務局長ほか10名程度のメンバーで運営していくことなども決定した。なお事務局長には、梅津皙東電設計理事・原子力本部長が就任した。

NSネットは東海村・JC0施設で起きた臨界事故の反省を踏まえ、民間の立場から原子力業界全体の安全意識の向上や安全文化の共有化・レベルアップを図ろうという意図で設立された組織で、1.セミナーなどを通じて安全文化を普及させる、2.2年程度で一巡する程度のペースで会員間が相互に事業所を訪問し、相互評価を行う(ピアレビュー)、3.原子力安全に係わる情報交換・情報発信を行う、ことなどを、主な業務とする予定。また今後は機能を保つため、外部チェック機関として有識者、評論家、マスコミ関係者など5〜6名で構成する評議員会を設置することも予定されている。

総会後の会見で牧野理事長は、NSネットの業務の柱となるピアレビューについて「35社がお互いに壁を作らず現場を見せ合って、知恵を出し合おうというもの」とその主旨を述べ、これについて「大きな一つの飛躍だ」とした。また「ピアレビューの結果『問題あり』となった場合、その情報を公開するか」との質問に対し、同理事長は「失敗を守るための機関ではない。(原子力の)信頼回復のためには情報をクリアにするしかないので、オープンなものにしたい」と、できる限り公開する方針であることを明らかにした。また太田電事連会長も「問題が明らかになった場合は公表・勧告をする。出来る限り踏み込んで行きたい」とした。

なお発足当初の業務としては、ホームページ開設など情報発信・共有化の事業が予定されており、ピアレビューは準備を進め、来年度からの開始を目指すということだ。


NSネット会員 電力関係
電力9社、日本原子力発電、電源開発、日本原燃、原燃輸送、レーザー濃縮技術研究組合
燃料加工関係
原子燃料工業、三菱原子燃料、日本ニユクリア・フユエル、三菱マテリアル、住友金属鉱山、ジェー・シー・オー
プラントメーカー関係
東芝、日立製作所、三菱重工業、三菱電機、石川島播磨重工業、富士電機、住友原子力工業、日本核燃料開発、ニュークリア・デベロップメント、神戸製鋼所、日立造船、三井造船
研究機関
核燃料サイクル開発機構、電力中央研究所、日本原子力研究所

NSネット役員

理事長=牧野昇三菱総合研究所相談役。 理事=青木輝行中部電力副社長、梅津皙NSネット事務局長、榎本聰明東電常務取締役、川村隆日立製作所副社長、鈴木英夫三菱マテリアル常務取締役、竹内榮次核燃料サイクル開発機構副理事長、根岸学日本原燃副社長、日浦尚也三菱重工常務取締役、前田肇関西電力副社長、目黒芳紀日本原子力発電常務取締役。 監事=鮫島薫電力中央研究所専務理事、宮本俊樹東芝専務。


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