[原子力産業新聞] 1999年12月16日 第2017号 <2面> |
長計策定会議第1分科会、 「安定供給も視点に」信頼確保で議論、航空業界との比較紹介原子力委員会長期計画策定会議の「国民・社会と原子力」について議論している第1分科会(座長・太田宏次氏、高原須美子氏)の第4回会合が9日、東京都内で開かれ、国民の信頼感の確保等のテーマについて議論した。 まず委員の宇賀克也東大大学院法学政治学研究科教授が「政策決定のあり方」について報告した。字賀氏は政策過程から公衆を参画させることが重要だとし、パブリック・コメントの募集は早い段階から行うことが望ましいと述べた。 また「初めに原子力ありき」でなく「原子力発電をストップした時の対応」を代替オプションとして議論する必要があること、「NIMBY」は本来は行政・事業者が使ってはいけない議論で、立地点に立候補する所がないのはマイナス面の過大評価や振興策の過少評価など、どこかに問題があるのであり、その点を踏まえた議論をすべきだと指摘した。 また委員の田中靖政学習院大法学部教授は、原子力に関する世論形成に最も寄与するのは「確率論的リスク評価」でなく「知覚されたリスク」と「知覚されたベネフィット」だと主張。またエネルギー問題はエネ・セキュリティの視点から評価検討されるべきであり、経済・エネルギー・環境・教育の4E政策を図ること、原子力のような「ハードエネルギー」と太陽光のような「ソフトエネルギー」の両立についての国民的議論の必要性を指摘した。 さらに黒田勲委員(日本ヒューマンファクター研究所所長)の発表では、原子力と航空業界との比較が行われた。航空機は事故が起こり得るという考え方に対して、原子力は事故が起こり得ないという考え方てあり、さらに航空業界では常設の事故調査組織があり、公正中立を保っていること、航空業界の安全についての変遷は個人からチームヘ、チームから組織の安全文化へというものだったと紹介した。 その他、委員からは女性の原子力業界への進出が進まないと女性の声が反映されないこと、社会に出ていない女性の原子力情報は乏しく、新聞やTVの情報しかなく、原子力というとすぐに反対や現状維持を支持するようになること、技術の伝達・継承の重要性、学校教育の重要性などが指摘された。
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