[原子力産業新聞] 1999年12月16日 第2017号 <5面>

神戸製鋼所・ステラケミファ、ボロン10を濃縮、大量生産

来年秋にも工場操業へ
臨界制御や遮蔽用、米社独占体制に対抗

神戸製鋼所は7日、フッ素化合物メーカーの最大手であるステラケミファ(大阪市、深田純子社長)との共同開発により、原子炉の臨界制御や中性子遮蔽材などに使用されるボロン-10を濃縮し、大量生産する技術を国内で初めて確立したと発表した。2000年秋からステラケミファの泉工場(大阪府泉大津市)で年産数トン規模の商業生産を開始する。

現在、濃縮ボロンは米国メーカー1社が独占供給しており、調達コストや安定品質、納期管理の面で不安があった。同社は自社生産の研究開発を行ってきたが、昨年7月から濃縮ボロンの生産に不可欠なフッ素化合物生産販売大手であるステラケミファと共同で年産100キロ規模のパイロットプラントの運転を実施、「化学交換蒸留法」と呼ばれる製造方法を開発し、商業化に目処をつけた。

天然のボロン(ホウ素)には、質量数の違いによりボロン-10とボロン-11の2種類の同位体が存在する。このうち、ボロン-10の自然界での構成比は約20%しかない。ボロン-10にはボロン-11や他の元素と異なり中性子を吸収する能力が極めて高いという性質があるが、このボロン-10の濃度を高めることで中性子の吸収性能をより向上させることが可能になる。今回確立した技術では、この2種類のボロン同位体を分離し、ボロン-10の濃度を95%にまで濃縮することに成功した。具体的には、ボロン-10が錯化材に溶けやすい性質を利用し、濃縮塔で天然ボロンを反応させ、ポロン-10のみを含んだ錯化材を取り出す。その後、この化合物からボロン-10をヒーターで加熱分離する。この製造方法は既存の蒸留技術が使え、連続生産が可能。さらに、設備の簡素化も図れるためコストダウンも期待できるという。

濃縮ボロンは今後、PWRの反応度の抑制に使用されている天然ボロンに代わる代替需要や、放射線医療用など広範囲な需要が見込まれていることから、同社ではこの濃縮ボロンを自社の使用済み核燃料の輸送・貯蔵容器に使用するほか、外販にも積極的に取り組んでいくとしている。


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