[原子力産業新聞] 1999年12月23日 第2018号 <1面> |
エネ調 原子力発電、経済面で有利性確保原子力発電コスト5.9円に総合エネルギー調査会の原子力部会(部会長・近藤駿介東大教授)は16日、第70回会合を開き、原子力発電の経済性について議論した。会合では、出力130万キロワットの原子力発電プラントを設備利用率80%で40年間運転した際、「フロントエンドから核燃料サイクル、バックエンドまで含めた原子力の発電原価は5.9円/kW時になる」との通産省・資源エネルギー庁による試算が示され、利用率および運転年数を同条件とした際の石油火力、LNG火力、石炭火力などの試算値に比較して、原子力発電の方が経済的に優れているとの結果を得たことなどが明らかにされた。 LNG火力は6.4円エネルギー源の評価あるいはエネルギー選択を行うに当たって重要な指標の一つである経済性について、最近では94年に電気事業審議会需給部会において、原予力発電の発電単価は1kW時あたり約9円と試算され、他の電源に比較しても経済的に遜色はないとの評価を得ていた。しかしその後、運転年数および設備利用率、金利、為替レートなどが大きく変わったことに加え、原子力部会で核燃料サイクルコストとバックエンドコストが実勢に近い数値で試算されたことなどから、今回改めて試算がなされることとなった。 試算に当たっては、電源間の発電コスト比較を行うことが有効との判断から、前回と同様に水力、石油火力、LNG火力および石炭火力についても試算を実施。また各電源間のコスト比較の観点から、全電源の運転年数を40年に、また設備利用率を80%(水力は45%)に、割引率は3%に統一して行った。 結果、1kW時発電するのに原子力は5.9円のコストがかかるのに対し、LNG火力では6.4円、石炭火力は6.5円、石油火力は10.2円、水力では13.6円が必要となり、原子力発電が最も経済的という試算値を得たという。この5.9円/kW時の内訳は、資本費2.3円、運転維持費1.9円、燃料費(核燃料サイクルコスト)1.7円となっており、また燃料費(核燃料サイクルコスト)は、フロントエンド0.74円、再処理0.63円、バックエンド0.29円といった構成になっている。なお原子力の試算値について、エネ庁では「電源三法交付金などの政席予算は発電所周辺住民に還元されている」ことから、「発電に要する費用として扱うことは適当でない」としながらも、最近5年間の通産省分原子力予算(95年-99年分)の平均値を、98年度原子力発電の総発電電力量で割った場合、「0.39円/kW時となる」との値も示している。 また、前回試算では原子力およぴLNG火力が約9円、石炭および石油が約10円とされており、今回の試算では大きく下方修正されているが、これについてエネ庁は、「前回試算時には、運転年数を原子力16年、全火力15年、水力40年に。設備利用率は70%(水力のみ45%)としていたため」と説明している。
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