[原子力産業新聞] 1999年12月23日 第2018号 <2面> |
[原子力損害調査研究会] 臨界事故の損害判断基準示す臨界事故適用範囲、11月中・10キロ圏内に9月末に起きたJCO事故に伴う損害認定に資する検討を行っている科学技術庁の「原子力損害調査研究会」(会長・下山俊次科学技術庁参与)は15日、いわゆる風評被害なども含めた「営業損害」について、事故との相当因果関係が認められる限り賠償法に定める「原子力損害」に当たるとの考えを示すとともに、その原則的判断基準として、11月末頃までに、現場から10km以内で生じた減収等についてはその因果関係があるとみられる、といった見解を示した。 原賠制度が初めて適用されると見込まれる今回の事故で、損害賠償の請求が行われつつあるが、これらは原賠法に定める核燃料物質等の作用によらないものが多いため、「原子力損害」に該当し補償の対象になるかどうか、專門の弁護士らで構成する同研究会で調査・検討をしてきた。 その結果、適用に当たっては同法の「被害者の保護を図り」「原子力事業の健全な発達に資する」という目的を失することのないよう解釈すべきとの見方で一致した。さらにわが国が被爆国で、またTMI・チェルノブイリ事故等の情報も加わって、現在国民の原子力に対する恐怖感は著しいとし、事故が人々の購買行動を決める主観的要素に影響を与えた可能性などを示唆している。 その上で、研究会はこのような「営業損害」に関する事故との因果関係の判断基準を定めるため、1.周辺住民の安全認識の浸透度合い、2.市場での騒動の沈静化時期−など具体的な事実関係を踏まえ慎重に調査・検討を行い、今回の時間・場所的基準を得た。 なお、これらは現時点での暫定的なもので、今後の被害状況の判明によって拡大され、また請求の内容によっては個別的な判断がされることもありうると付け加えている。 下山会長らは会見で、「風評被害解決は難しい問題」とした上で、他の原子力事故や近年の「ナホトカ」号事故なども参考に今回の調査を進めてきたことを述べた。研究会では今後、避難費用や慰謝料の問題、原賠制度の精神についても審議することとしている。
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