[原子力産業新聞] 1999年12月23日 第2018号 <2面> |
[長期計画] 第2分科会、風力30万kWは期待柏木教授が指摘、容易でない省エネ達成原子力委員会・長期計画策定会議の「エネルギーとしての原子力利用」をテーマにしている第2分科会(座長・近藤駿介東大教授、前田肇関電副社長)は13日、第4回会合を開き、前回同様に新エネルギーとの比較によるエネルギー政策の中の原子力利用のあり方について審議するとともに、原子力産業のあり方についても議論した。 新エネ・省エネの視点からエネルギー・ビジョンを論じた柏木孝夫東京農工大教授は、2010年度までに達成すべき省エネ量は石油換算で5,600万キロリットルまでにおよび、これは現在家庭用で使用している全消費エネルギー量に相当するもので、省エネを達成することは容易ではないとしながらも、その約半分を省エネ法の強化で目標を達成できる見込みだとした。また都市部でカスケード型エネルギーシステムを導入すると、川崎市の例で省エネ効果は30〜50%が可能だとの試算結果も示した。新エネについては太陽光には多くは期待できないが、風力は目標値30万kW分は期待できるとし、騒音や電波障害などもあり立地的にはオフショアが有望だとした。さらに一次エネルギ一に占める電力化率は現在の39%から2030年には45%と予想されるとの見通しを述べ、特に電力について合理的な環境型の電力ネットワークはどうあるべきかについて議論すべきだとした。 一方、天然ガスの需給見通しについて報告した三井物産の寺島実郎戦略研究所長は、LNGは原子力と同等の発電コストであること、埋蔵量は64年分だが、その3分の2がロシアと中東に偏在していること、日本のLNGの需要は世界の3%であるなどの特徴を述べた。また「原子力をなくしてもLNGで賄える」という意見については、日本は現在5,360万トン/年分の契約があるが設備的には6,000万トンが最大であり、今の現状が日本にとって世界的な需給とバランスが取れており、急にこれ以上供給を増やしていくことは好ましくないという見解を示した。 また東京電力の榎本聰明氏は、我が国のエネルギー戦略の考え方として、政策決定に当たっては、無資源国である日本の状況を踏まえた総合的議論、判断が必要であるとし、方向牲としては、エネルギーにも市場メカニズムを導入するが、エネ・セキュリティ確保と環境問題への対応といった課題とのバランスの確保が前提だと述べた。さらにこうした課題への対応は日本単独でなく、アジア地域全体を視野に入れた検討が必要だとするとともに、原子力を基幹電源とし省エネの推進、新エネの積極的導入、国際協力・貢献等、総合的な戦略を立案すべきだと強調した。
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