[原子力産業新聞] 2000年1月5日 第2019号 <4面> |
[年頭所感] 科学技術庁長官 中曽根弘文安全確保対策に万全を新年あけましておめでとうございます。 21世紀を目前に控えた今、我が国は、これまでに整えられた社会システムを新しい時代にふさわしいものに変革していかなければならない状況にあります。このような中、豊かで潤いのある社会の発展基盤を構築し、明るく希望に満ちた21世紀を迎えることができるよう努力していくことが我々に課せられた使命であります。科学技術は、経済構造の改革を実現し、活力と創造性にあふれた社会を創っていく原動力であり、人類の未来に大きな夢と希望をあたえてくれるものであります。私は、このような科学技術の振興に日々全力で取り組んでおります。 昨年を振り返りますと、様々な課題に直面した一年でありました。まず、原子力分野においては、昨年9月に東海村でウラン加工施設の事故が発生いたしました。地元住民をはじめとして国民のみなさまに多大なご心配、ご迷惑をおかけしたことを、大変厳しく受け止めております。原子力安全委員会において、事故原因究明が行われ、再発防止策の考え方が示されたところですが、事故に至る経過や事故後の対応への反省から、原子力安全規制の抜本的強化と原子力防災対策の構築を早急に図るため、昨年秋の臨時国会に原子炉等規制法の改正法案と原子力災害対策特別措置法案を提出し、集中的なご審議の上、可決成立いただいたところであリます。加えて、原子力安全委員会については、その独立性と機能を一層強化するため、本年4月には事務局体制を抜本的に拡充するとともに、事務局を当庁から総理府本府に移管する予定であります。また、原子力委員会は、国民に対して21世紀に向けた原子力開発利用の全体像と長期展望を明らかにするため、新たな原子力開発利用長期計画策定のための調査審議を進めておりますが、今回の事故も十分に反映していただく必要があります。原子力を取り巻く状況には大変厳しいものがありますが、今後も国民の信頼回復に向けて最大限の努力をしてまいります。 1年後の2001年1月の中央省庁等の改革においては、人文・社会・自然科学を総合した科学技術の総合戦略の策定を行う総合科学技術会議と、科学技術の総合的振興を任務とする文部科学省の設置による創造的科学技術行政体制の整備が、改革の柱の一つとされております。昨年はこのための具体的な組織設計を行ってまいりました。私としては、今後とも、創造的科学技術行政体制の整備に向け、先頭に立って対応して参る所存です。 以下は、本年、私が力を入れていきたいと考えている施策であります。 まず、新世紀に向けた重要戦略分野を開拓してまいります。特にゲノム機能解明等の最先端の研究を推進し、その成果に基づき、個人の特徴に対応した医療、植物を利用した食生活の向上を実現するとともに、経済新生の鍵となるバイオテクノロジー産業を振興し、安心して暮らせる豊かな長寿社会を築くことを目指します。また、先端技術を駆使して地球環境データの収集・研究を行うことにより、地球温暖化等の地球規模の変動予測に資する全球的地球環境総合診断プロジェクトに取り組んでまいります。さらに、資源循環型社会を目指し、有害物質の除去・削減など環境負荷の低減に資する環境にやさしい材料の研究開発等を進めます。さらに、我が国の国際社会における立場を踏まえ、我が国における科学技術の一層の進展を図って行くために国際的な科学技術活動を積極的に展開してまいります。 天然資源に乏しく、少子高齢化が進展している我が国において、活力に満ちた豊かな21世紀を迎えるためには、科学技術を振興し、「科学技術創造立国」を実現することが不可欠です。 私は、科学技術に課せられた重大な使命を全うすべく、科学技術行政の責任者として、全力を尽くしてまいる決意ですので、みなさまの一層のご指導、ご支援を賜りますよう、お願い申し上げて、私の年頭のご挨拶とさせていただきます。
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