[原子力産業新聞] 2000年1月13日 第2020号 <3面>

[フランス] ラジウム回収キャンペーン実施

仏廃棄物管理庁、1年間で65グラム見込む

フランスの放射性廃棄物管理庁(ANDRA)と電離放射線防護本部(OPRI)は大々的に公示した取り組みの一つとして、医療用や産業用に使われたラジウム含有物を回収する1年間のキャンペーンを1,600万フラン(2億5,600万円)の予算で昨年12月から開始した。

ラジウムは今世紀の初頭から70年代にかけて、ある種のがんや皮膚障害の治療に用いられていた。現在では注射針やチューブ、塗薬ベラなどの医療品に使われることはなくなったが、医療施設に在庫が残っていたり、医師や個人が所有したまま忘れているケースが多々あると考えられている。これまでラジウム含有物による被害は報告されていないものの、潜在的な健康影響が懸念されることから、放射性物質の管理を担当する両機関がその探索と回収にあたることになったもの。

OPRIのJ-F・ラクロニク総裁によると、ラジウム針には大抵、5ミリグラムほどのラジウムが残留しており、これは10センチメートル離れた距離から4ミリシーベルト(mSv)時の放射線を浴びるのに等しいと言う。近年、一般大衆の年間被曝許容限度が5mSvであることを考えると、密閉されていないラジウム含有物の傍で1時間も被曝し続ければ許容限度に達してしまうことになる。

また、ラジウム針は当時、金釘の2,000倍の価値があったことから、両機関は医学利用とは別こ投資目的でこれを所有している銀行や公証人らの存在が考えられると指摘。これらのラジウム含有物の多くは所在不明となっているが、過去20年間の利用実績などからラジウム226を65グラム回収することが可能と見込んでいる。このうち50グラムは5,000以上の医療用ラジウム含有物から、残り15グラムは蛍光羅針盤など産業用から集められるはずだと指摘した。

実際の回収キャンペーンの方法としては、医学や環境などに関する専門誌はもちろん、全国紙や地方紙、ミニコミ誌などにも連日情報を流しているほか、病院および医療関係施設への小冊子配布とポスターの掲示を実施している。また、インターネットの両機関のサイトでも関係情報を掲示するとともに無料の電話相談も実施している。ANDRAとOPRIは回収したラジウム含有物をサクレーにあるフランス原子力庁(CEA)の特殊施設に貯蔵する予定だ。


Copyright (C) 1999 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM,INC. All rights Reserved.