[原子力産業新聞] 2000年1月27日 第2022号 <3面>

[仏・DSIN] 洪水被害の反省点を総括

 先月下旬の洪水で運転停止に追い込まれたルブレイエ原子力発電所(各95万キロワット、PWR4基)について、フランス原子力施設安全局のA・ラコステ局長は14日に記者会見を開き、「一般大衆の安全が脅かされるような事態ではなかったが、危機管理、外部電力の供給方法、洪水防止対策、大衆との連絡体制――の4つの側面で明確な教訓を得た」と述べた。

 DSINでは国際事故評価尺度(ITNES)でレベルIIの被害を被るに至った今回の洪水事象を3段階の時系列で説明。まず、暴風雨が襲ってきた12月27日午後7時30分頃から翌朝までには外部電力供給が一部ストッ.フするとともに、発電所サイトヘの道路が洪水で封鎖された。28日午前1時から8時の間には、1、2号機用燃料貯蔵建屋の地下が浸水し、複数の安全バックアップ・システムの使用可能性が不確かになった。最終段階の午前8時30分以降、1号機の給水系の一つが使用不能になるなど事態は悪化。一時町はジロンド川から直接水をひいている第2系統も冠水する危険性があったとしている。

 DSINはこのような事象から次のような教訓が得られたと指摘した。

 緊急管理  全般的に見て、運転者である仏電力公社(EDF)やDSINの技術支援機関である原子力安全防護研究所(IPSN)、およびDSIN自体が取った措置は適切だったといえる。具体的には(1)EDFからDSINへの連絡が迅速、完璧かつ定期的だった(2)EDFのミスは第一レベルの内部緊急事態宣言(非原子力部分の事象に関する)の正式な発令が数時間遅れたこと(3)原子力部分に係わるサイト内限定の潜在的な進展に対する対策は的確なタイミングで発令された(4)EDFによる人員派遣と復旧活動は適切なものだった。(5)地元消防団も直ちに到着した(6)休日だったにも係わらず国の緊急対応チームも素早く設置された。

 電力供給方法  (1)激しい嵐のため、程度の差こそあれルブレイエ原子力発電所の4基すべてに外部電力の供給でトラブルが生じた。外部電力の完全な遮断は通常の緊急時対策の中で予測されているので深刻な事態とは言えず、すべてのバックアップ対策が計画通りに取られた(2)しかし、原子炉同士で電力を供給する相互バックアップ設備などで軽微な以上も見られ、今後詳細な調査が必要。

 洪水対策  今回の事象で同発電所の洪水対策が不十分であったことが証明されてしまった。例えば(1)ジロンド川からの水を防ぐ堤防に十分な高さがなかったことは98年の調査時点でDSINが指摘していたににも係わらず、改善作業は遅れていた(2)敷地の地下を通っていた給水トンネルが1、2号機の地下を冠水させたことから、EDFの「給水トンネルは燃料建屋からは切り離されている」とのEDFの主張が誤りであったことが判明した。

 一般大衆への情報伝達  (1)DSINは28日午前10時30分を皮切りに合計9回、関係情報を公表したが、地元紙の報道は発電所の状況より暴風雨の情報に比重を置いていた(2)国のマスメディアも視覚に直接訴えかける嵐の報道に終始し、原子力発電所の情報が迅速かつ十分に伝わるような取り上げ方をしなかった。また、これらの情報は地元自治体の代表や同発電所の情報委員会へ直ちに伝えられていなかった。


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