[原子力産業新聞] 2000年1月27日 第2022号 <3面>

[米・DOE] 原子力「CO2削減に貢献」

 米国エネルギー省(DOE)の工ネルギ一情報局(EIA)は11日、温室効果ガスの排出削減を目的に98年に全米の産業界で実施されたフプロジェクトでは、削減されたCO2排出量の約分は原子力発電の貢献によるものだったとする報告書を公表した。

 「温室効果ガスに関する任意報告」と題されるこの報告書は、92年のエネルギー政策法に基づき94年から毎年EIAがまとめているもので、産業界の企業および団体が温室効果ガス削減のために自発的に実施しているプロジェクトの数と、これを行わなかった場合のガス排出量を集計・分析したもの。年を追うごとに申告する企業数も増え、98年実績では187の企業が合計1,507件のプロジェクトを報告。報告書はこれらにより2億1,200万メトリックトン相当のC02排出が削減され、これは米国全体がその年に排出した量の3.2%にあたると指摘している。

 EIAが集計を始めた当初は、申告企業・団体数の88%が電力関係だったが、近年は他業種企業の参加や合併・統合の影響で電力業界の比率は徐々に低下。GMやIBM、ジョンソン&ジョンソンなどの製造業が加わった98年実績では比率は58%(105社・団体)となっている。それでもプロジェクトの件数では76%にあたる1,147件が自家発電を含む電力部門からの報告だった。

 このうち430件が86社の電力会社による電力供給事業関係のプロジェクトで、これらによるCO2の排出削減量は1億1,200万メトリックトンと見積もられたあ。この中でも1億トンはCO2全くを排出しない全米103基の原子力発電所による削減量とされており、米国全体の削減量である,2億1,200万トンの47%が原子力の貢献によるという評価を受けたもの。原子力のCO2排出削減量はまた、97年実績の7,000万トンを43%上回っており、運転実績の改善や石炭火力発電所からの振り替え運転などが功を奏したと分析されている。

 今回の結果について米国原子力エネルギー協会(NEI)のJ・コルビン理事長は、「この報告書を読んだ人なら誰でも、原子力に頼らずに京都議定書の目標値を達成できないことがハッキリわかるはずだ」と述べ、クりーンな大気を獲得する上での原子力の価値が数字で明確に示されたと指摘。米国の総電力需要の5分の1を賄う信頼できる電源だというほかに、大気を清浄に保つ一助という二つの役割を担っている動かしがたい証拠になったと強調した。


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