[原子力産業新聞] 2000年2月3日 第2023号 <4面>

[静岡県] 原子力防災訓練を実施

 静岡県は1日、中部電力の浜岡原子力発電所立地地域の5町との共催で、浜岡3号機での事故を想定した「原子力総合防災訓練」を関係60機関、住民ら約4,500人の参加のもとに行った。JCO事故後、初めてとなる自治体の防災訓練で、臨界事故を教訓に昨年12月に成立した原子力災害対策特別措置法を踏まえ、国・県・市町村による合同協議や専門家らのヘリコプター移動、放射線モニタリングシステム「SPEED1」の活用、甲状腺障害を防ぐヨウ素剤の搬送、食料供給に備えた自衛隊の出動、さらには住民の屋内退避や避難など、これまでにない実践的な訓練が行われた。訓練は午前7時半から始まり正午12時に終了した。

 訓練は災害対策基本法、県・関係町地域防災計画に基づき、3年に1度実施しているもので、静岡県と浜岡町、御前崎町、相良町、小笠町、大東町の5町による主催。国の関連省庁・研究機関、中部電力を始め、地元警察・消防、医師会、産業団体、報道機関などの協力で進められた。

 訓練は午前7時30分、浜岡3号機で運転中冷却系に異常を生じる事故が発生、原子炉は緊急停止したが、排気筒から放射性物質の放出が認められたと想定。県は直ちに災害対策本部を設置し応急対策を開始。空間放射線線量率の上昇が認められたことから、住民の避難等を実施するという筋書きで行われた。

 まず、早朝のため県職員宅を経て事故の第1報が8時10分に県庁防災局に入ったのを受け、関係機関への対策本部要員派遣、報道機関への広報要請、庁舎内総合司令室への要員参集の後、8時30分に石川嘉延知事を本部長とする県災害対策本部が、同時に県環境放射線監視センターに、柴順三郎副知事を本部長とする現地本部がそれぞれ設置された。

 一方、現地では事故通報を受け、環境放射線監視センターにてモニタリング・気象状況の確認が行われ、現地木部長、原研、サイクル機構、放医研の専門家がヘリコプターで到着の後、各種防護対策に備えた検討協議が始まった。他方、県庁本部から知事はTV電話を通じて現地に対して、「住民の安全を第一に万全を期すよう、国省庁との連携のもと迅速かつ的確な災害応急対策を」との指示を与え、それを受け現地では仮想事故の進展具合から、9時20分に周辺町の住民に屋内退避を、同40分に避難をそれぞれ指示。並行して、地元警察による交通規制、消防による火災防止の巡視がされた。退避・避難に参加した住民は3,800人を超えた。

 その後、11時15分に中部電力からの事故終息の受信により、防護対策は解除、対策本部は廃止され訓練は終了した。

 なお、浜岡町では原子力防災講習会・放射線測定器等展示会が開かれ、屋内退避に際して、(1)窓や扉の開口部を閉じる(2)換気扇を止め隙間を閉じる(3)着替えとうがいをする(4)広報・TV・ラジオによる情報に注意する(5)みだりに外出しない――といった注意事項が示されたが、熱心に聞き入る住民からは東海大地震に対する不安の声も出た。

 訓練終了後の会見で、現地対策本部長を務めた柴副知事は、所期の目的を達成でき、今後ともより充実した訓練を実施したいとの考えを示す一方で、これからの課題として(1)ポケベルによる関係職員への一斉通報を行うなど、より迅速な初動体制の確立(2)多くの地域住民に向けた、原子力防災に関する講習会の充実――を掲げた。


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