[原子力産業新聞] 2000年2月10日 第2024号 <2面>

[サイクル機構] 地層処分フォーラム開催

 核燃料サイクル開発機構は3日、「2000年レポート」についての一般への理解を深めることを目的とした初めての「地層処分フォーラム――高レベル放射性廃棄物の後始末を考える」を東京・有楽町の朝日ホールで開催した。一般参加者を含め約400名聴講のもと科学ジャーナリストの中村浩美氏をコーディネーターとして、専門家やマスコミ関係者、学生らを交えて自由討論を行った。

 フォーラムは、昨年に「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性―地層処分研究開発第2次取りまとめ」(2000年レポート)を国に提出したのを受けて、地層処分の必要・安全性について意見交換を行うことを目的としたもの。これまでも随時取りまとめの進捗状況について成果報告を行ってきた。

 開会に当たって都甲泰正理事長は、現在高レベル廃棄物処分事業推進のための法整備や安全規制の審議が進められている一方で、その問題が一般の人たちに馴染みが薄く、処分対策に関する正確な情報が社会に十分行き渡っていない現状に触れ、この行事をきっかけに広く関心が深まっていくことを期待した。

 パネル討論では、学習院大学在学の吉田有美さんが「21世紀の環境とエネルギー」という自身の研究テーマに関連し、「地層処分のベネフィットとリスク」を考えることを期待して出席、高レベル廃棄物の宇宙処分の可能性について尋ねたが、増田純男サイクル機構2000年レポートチーム部長は、ロケット打ち上げ失敗に伴う放射能拡散の危険性などから非現実的との考えを示したのを始め、徳山明富士常葉大学長も「地質恒常性」の理論から地層処分の妥当性を主張した。また、リスクに関して鳥井弘之日経新聞論説委員は、日常生活で一番の危険は交通事故だと述べて、輸送安全の問題をもう一度詰めておく必要を訴えた。

 後半の会場との意見交換では、東海村サイクル機構PR施設の地理不案内に困惑した経験を語る学生の声などもあった。終わりに、中村氏はサイクル機構の積極的な情報発信と、処分問題についての国民的議論の必要性を訴え討論を締めくくった。なお、サイクル機構ではインターネットフォーラムhttp://wand.mri.co.jp)による意見募集も行っている。


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