[原子力産業新聞] 2000年2月10日 第2024号 <2面> |
[原子力委員会・長計策定会議] 「信頼確保」を探り議論「国民・社会と原子力」をテーマとして議論している原子力委員会・長計策定会議の第1分科会(座長・太田宏次氏、高原須美子氏)の第5回会合が1月17日、東京都内で開かれ、国民の信頼感の確保について議論した。 まずマスメディアの状況について報告した小島明委員(日経新聞論説主幹)は、「W.リップマンは我々は見てから定義しないで、定義してから見ると指摘したが、この傾向は憲法と原発の問題に強く現れ、ステレオタイプ化された二分法的な視点になりがちでもある」と述べた。また1994年1月以降の5年間における日経新聞紙面での原子力関係の報道を分析。この間に掲載された原子力関係記事は約7,600件で、これはネットワークの19,000件、宇宙12,000件、航空機・飛行機の9,300件に次ぐが、事故報道や不満・反対の消極的な意識の報道が合計で24.5%あり、この数値は宇宙、飛行機、新幹線などの報道と比べ高く、「日経は原子力について、相対的には好意的とされる」が、「他の多くのメディアの報道はこれとはだいぶ違うと推察できる」と語った。また原子力関係者に求められていることとして、原子力は安全だとする論理の見直し、安心工学の視点が重要、安全か危険かの二分法ではなく、その中間にある様々な危険の程度・段階を説明する必要があると強調した。 マスメディアに関しては、山崎委員(関電)は「今のマスコミの対応は感覚的であり、これでは安心感は得られない。原子力がどの程度のリスクにあるのか、他の業種との比較も交えて公平に評価してもらいたい」と訴えた。オブザーバーの木元原子力委員は「メディアは第3の権力ともいえる。TVでもそうだが公正中立とはいかず、どうしても主観が入ってしまう。間違った報道等にはメディアとディベートしていかない限り原子力の信頼感を得ていくことは難しい」との見方を示した。また神田委員(京大教授)は「反対」か「賛成」かと議論が「二極化すると議論が貧困化する」と懸念したのに対して、下平尾委員(福島大教授)は「議論を分けると体系化し易い。マスコミは特殊的なことを一般化する。それは宿命的なものだろう」と述べ、また住田委員(弁護士)はドイツの記者は国民はやはり二分法でしか理解できないと言っていたことを紹介した。クラーク委員(多摩大学長)は「リスクなど関係ない。市民運動が強まれば強まるほど、反対運動は強くなる。反対派も含めての議論が必要だ」と述べた。 マスコミが原子力の長所等を紹介しないという意見については、長見委員(日本消費者協会理事)は「情報操作しようとするとき、何もない時にやるのは非常に難しいのではないか」と述べる一方、枡本委員(東電)は「プラスの情報をもっと発信する必要もある」と指摘した。 |