[原子力産業新聞] 2000年2月17日 第2025号 <1面>

[原子力安全委員会] 緊急事態 基準値は500マイクロシーベルト/時

 原子力安全委員会の原子力発電所等周辺防災対策専門部会(部会長-能澤正雄高度情報科学技術研究機構顧問)は9日、昨年12月に成立した「原子カ災害対策特別措置法」に基づく対応策で、(1)原子力施設等の異常時において事業者が通報すべき敷地境界付近の放射線量(線量率)は5マイクロシーベルト/時以上検出する場合(2)国が緊急事態宣言を行い、対策本部を設置する際の基準は500マイクロシーベルト/時以上――とする線量基準を定めた。この基準は14日に政府が公表した同法の施行令・施行規則の試案に盛り込まれた。今後の防災方策は3月末までに防災基本計画の見直し原案や地域防災計画作成マニュアル見直し原案の作成、4月以降は関係機関での準備を本格化し、災害対策特措法の施行は6月中旬頃になる見通しだ。

 今回、同専門部会がまとめた基準のうち、政府が緊急事態宣言を行う際の判断基準となる線量率は、敷地境界付近の放射線量が「1地点で10分以上500マイクロシーベルト/時以上あるいは2地点以上で500でマイクロシーベルトを検出する場合(落雷を除く)」としている。この線量率は「通報の基準」の100倍に相当する。

 線量率の設定に当たっては、瞬時にのみ検知される事象や機械の誤動作を排除することなどを念頭に、(1)国際基準との整合性をとる(2)避難等防護措置の観点から十分余裕がある(3)今回のJCO事故が確実に対応できる――という観点から、米国の例も参考として検討。JCO事故ではガンマ線で840マイクロシーベルト/時(中性子線で4.5ミリシーベルト/時)、TMI事故では約600マイクロシーベルト/時相当がそれぞれ計測されており、いずれも対策本部を立ち上げるレベルになる。

 また、該当する事象としては(1)排気筒等での通常放出部分で一定以上の放射性物質が放出(2)閉じ込め機能に異常が生じた場合において一定以上の放射性物質等が放出(3)臨界事故が発生(即座に対策本部を立ち上げる)(4)その他原発等で外部への大量の放出に至る兆候を示す事象が発生――を挙げている。

 一方、原子力肝業者が通報すべき基準(特定事象の通報)については、敷地境界付近の線量率が「1地点で10分以上5マイクロシーベルト/時以上あるいは2地点以上で5マイクロシーベルト/時以上を検出する場合(落雷を除く)」としている。また測定方法はモニタリングポストでガンマ線の測定を行い、必要に応じ可搬式の中性子線測定装置によっても対応。設備設置は2台以上とすることとしている。

 この通報を課する特定事象は(1)排気筒等での通常放出部分で一定以上の放射性物質が放出(2)管理区域で火災・爆発等があり、通常放出部分以外の閉じ込め機能の異常が発生し一定以上の放射性物質等が放出(3)臨界事故の恐れまたは実際の発生(4)中央制御室等の管理施設が運転不能(5)その他原発等事前の兆候を把握できる施設の固有の事象――の場合を挙げている。通常放出部分での放出については、周辺監視区域外での放射性物質の濃度限度1ミリシーベルト/年に達するような放出が検出される状況をべースとして、排気と排水とで基準を設定した。


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