[原子力産業新聞] 2000年2月17日 第2025号 <2面>

[原安協] 放射線事故医療でシンポ

 原子力安全研究協会は8日、第11回原安協シンポジウム「放射線事故による患者の医療を考える」を東京千代田区の都市センターホテルで開催した。  会では、昨年のJCO臨界事故経験を踏まえた青木芳朗原子力安全委員の基調講演のほか、二本の講演およびパネルディスカッションが行われた。

 その中で放射線医学総合研究所の鈴木元臨床研究部長は、「放射線事故時の医療システムの現状」と題して講演し、「現在の原子力防災はTMI事故を想定したもの」と述べるとともに、第1次緊急被爆医療(放射性物質が環境中に放出される事態が起こり、住民の外部全身線量および甲状腺の予測線量当量が基準値を超す恐れがあると判断され、住民を避難所に避難させた段階で始まる医療)の講習会の参加者には、指定されている公的病院の医師はほとんどおらず、また地元医師会の医師は、汚染がある住民を診なくてよいようになっていることから、「患者に接する医師が、被曝医療に関する教育や訓練をほとんど受けていない」状態になってしまっている今の日本の被曝医療は「保険医療的だ」として、緊急被曝医療の重要性を訴えた。

 また同氏は、第1次および第2次緊急被曝医療(避難所で対処しきれない残存汚染や内部汚染があり、創傷合併するような場合に行われる医療)の質的向上を目指して作られた「緩いネットワーク」である放射線事故医療研究会を紹介した。さらに臨界事故では@JCOはネットされていない事業所だったA官庁を超えた被曝医療体制の統一的計画と専門家集団の維持・育成の必要性――などを指摘した。また同氏は緊急被曝医療の問題が明らかになったものの、活動開始後3年目を迎えた同医療研究会は、臨界事故の際にも非常に有効に機能したことなどを述べた。


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