[原子力産業新聞] 2000年3月2日 第2027号 <1面>

[原子力委員会] 円卓会議、原子力委に7項目の提言

 原子力委員会が設置する「原子力政策円卓会議」は2月25日、2年間にわたる議論を総括した提言を同委に提出した。「モデレーターからのメッセージ」とした提言では、@政府が国民に具体的にエネルギー需給シナリオを示すことA核燃料サイクルは今後の重要な選択肢の一つで研究開発は継続するとともに、「もんじゅ」の早期再開に努めることB原子力問題について「原子力政策コミュニケーション会議」(仮称)を設置し議論すること――など7項目について要望している。円卓会議は1996年に設置。当初は原子力委の下部組織的な位置づけだったが、98年に中立的な立掲に立って原子力委の方針とは一歩離れた観点から意見具申等を行えるよう改組され、議論が行われてきた。今回の提言をもって同会議は一応の役目を終える。

 新円卓会議のモデレーターは座長の木村孟氏、石川迪夫氏、小沢遼子氏、茅場一氏、中島篤之助氏の5名。モデレーターが会議の開催・運営を担ってきた。昨年度5回、今年度7回の計12回の会合を開き、延べ83名を招聘し幅広い意見を聞いてきた。

 提言ではまず、原子力は今後のエネ需給と密接不可分な関係にあることから、政府が国民に将来のエネ選択肢の形で明確に示すことを求めている。ここでは今後のエネ需要の伸びをどう見るかなどを問題とし、その上で具体的シナリオを要求しているが、現在の原子力依存度の高さを考慮すると「脱原子力」は現実性に乏しいことなどから、政府が検討すべきエネ需給シナリオは、原子力を@現行計画のように推進した場合A一定程度に抑えた場合B現状程度にとどめた場合――について作成するよう求めている。

 またJCO事故については、「国民の理解に水をさした衝撃的な事故」だったとし、国と原子力事業者が安全確保へ向けて、徹底した努力と責任の明確化を図っていくよう訴えた。そして国会議員が原子力を含むエネルギーの方向について、国会内外の様々な場で国民に見える方法で議論し、エネ政策に反映させる努力を求めている。さらに政府が電源三法交付金の支給に当たって、原子力立地地域の自助努力による発展を有効に支援できるような形に見直していくよう要望するとともに、原子力・エネについての国会内外での議論や小学校からの徹底した教育を強く求めるとしている。

 一方、核燃料サイクルに関しては、ウラン資源の有効利用の意味からも研究開発を続けるべきとの基本的な考え方を示している。とくに「もんじゅ」については維持コストも大きく、会議では多様な意見も出たが、研究開発の手段としての重要さから、無条件の廃炉は筋が通らないとのモデレ一夕ーの意見が一致し「安全に万全を期し早期運転再開へ向け努力すべき」との見解を示した。なお「もんじゅ」のその後のあり方としては廃炉か研究開発の継続かなどの選択肢から選定すべきだとしている。

 7番目の最後の提言では、円卓会議に代わるものとして、これまで同様に他政府機関と独立の立場に立って、情報収集・配付機能を持ち、国民の意見集約、政策提言を行う「原子力政策コミコニケーション会議」(仮称)の設置を提案している。

 提言を受けた原子力委員会では、現在審議を進めている長期計画改定にもこうした意見を反映させていく考えが示された。


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