[原子力産業新聞] 2000年3月2日 第2027号 <2面>

[原子力委・長計第3分科会] 「もんじゅ」の今後を議論

 原子力委員会の長期計画策定会議第3分科会(座長・鈴木篤之東京大学大学院工学系研究科教授、西澤潤一岩手県立大学長)は2月15日、敦賀市の福祉総合センターで会合を開くとともに、会に先立って藤家洋一原子力委員長代理と一部の同分科会構成員らによる「もんじゅ」視察も併せて行った。

 冒頭、河瀬一治敦賀市長は挨拶に立ち、原子力エネルギーは将来それに替わるものが開発されるまで、わが国にとって不可欠との認識を示したほか、その推進に当たって安全規制や防災対策、電源三法制度の効率的運用による地域振興などに、国を挙げて取り組んで欲しいと要望した。

 今回議論となったのは、主として高速増殖炉(FBR)開発における「もんじゅ」の今後についてだが、まず相澤清人核燃料サイクル開発機構理事は、その位置づけと研究開発の進め方について説明した。同氏はウラン資源の有効活用と欄境負荷の低減を意義とするFBR開発において、「もんじゅ」は「発電プラント技術確立の場」と位置づけられ、また将来の「技術実証の場」も付加されるとし、さらには、その運転・保守経験を基盤とした技術体系を確立することで、人類のエネ確保と環境保全、21世紀の原子カ科学技術の発展に貢献する価値があると述べた。また今後は、発電プラントとしての技術実証に向けた運転信頼性の確立などを進め、さらに高稼働率化等による経済性向上や実用化技術の確証を図っていくのが目的で、サイクル機構としては、地域社会の理解を得ながら「もんじゅ」の運転を早期に再開し、運転経験の蓄積を積んでいきたいという考えを示した。なお、同機構ではナトリウム漏洩事故の原因となった温度計について、改良・交換を施し、漏洩影響の抑制に向けてもテレビ監視システムを導入するなど、各種実験・解析を通じてその効果を確認している。

 若林二郎未来エネ研究協会顧問は、21世紀の世界人口の増加を大前提に、それに伴うエネ需要、炭酸ガス放出の増加により、地球温暖化が人類の最大の関心事になりつつあると警告。一方、原子力以外に炭酸ガスを出さぬ大規模エネ源は存在せず、天然ガスや燃料電池などでは解決しないことがゆくゆく明らかとなり、来世紀前半にもエネ開発は原子力主体という世界的認識に達するとの見込みを示し、プルトニウムリサイクルでウラン資源を有効に利用できるFBRの開発意義は大きいとしたが工学技術が成熟するのに軽水炉でも30年を要し、また今後世界でのFBR建設が期待できないことから、「もんじゅ」は稼働率を犠牲にしても研究開発に積極的にに活用すべきとの見解を示した。しかしながら、再びトラブルで長期間停止することは、わが国FBR開発にとって打撃となると危惧し、研究推進に際しては基礎研究は別に、実用化を目指したプロジェクトについては、ナトリウム冷却などの路線は原則変更すべきでなく、また再処理や分離変換も一つの方式に絞り込むために国が行う意思決定が、「中途半端になって本当に役立つ成果は得られない」ことのないよう、第三者による評価も重要と指摘した。

この他、欧来の原発が2020年頃までにリプレースを要するという説、化石・自然エネ開発の限界など、世界規模のエネセキュリティの立場から、FBR経済性実証等、世界に日本の技術を発信するため、「もんじゅ」の活用を訴える意見が多く聞かれた。


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