[原子力産業新聞] 2000年3月2日 第2027号 <3面>

[英・原子力検査局] 燃料データ不正問題で報告

 昨年、英原子燃料会社(BNFL)が関西電力高浜原子力発電所用に製造・納入したMOX燃料でペレット外径計測データの改ざんが発覚した問題で、英国原子力施設検査局(NII)は2月18日、「MOX実証施設(MDF)におけるお粗末な管理体制や従業員の訓練不足、適切な安全文化の欠如」などを原因として厳しく指摘する一方、日本に納入された燃料の使用上の安全性は確認できたとする報告書を公表した。

 BNFLのJ・テイラー最高経営責任者の訪日に合わせてNIIがこの日に発表した報告書は合計3つで、データ改ざん問題のほかにMDFが立地するセラフィールド・サイト(=写真)全体と高レベル廃棄物貯蔵の安全評価を扱っている。改ざん問題に焦点を絞った報告書のなかでNIIは、「重要記録の捏造に係わったのは個々の従業員であっても、組織構造的な欠陥がそれを許したと言える」と述べ、燃料ペレットの外径検査に関する監視管理体制が事実上機能しなかった点を指摘。それが従業員や品質管理検査官全体の土気や、この作業に対する重要性認識を低める原因になったとしている。

 具体的な例としてNIIは、@シフト・チームの管理者がペレット製造区域にばかり常駐し、外径の二次計測作業に立ち会う時間が少なかったA三人のシフト・チーム管理者のうち2人までが品質管理の外径検査指導要項に一度も目を通したことがなかったH人間工学を無視した工場設計や作業の単調さもデータの握造を助長したC捏造されたデータの一例は96年の日付になっていた――などを明らかにしている。

 NIIの事情聴取を受けたシフト・チーム管理者達は、一様にデータの捏造が過重労働から引き起こされたものではないとの認識を表明しているが、NIIの検査官は「肉体的に過重な作業でなくても長期間、同じことを繰り返し強いられる従業員にとっては、すべての検査手順が些細な作業以上のものに感じられるはずだ」と指摘。このようなことが今回の事件に繋がったのは驚くに当たらないとし、工場の設計や操業開始段階でBNFLは従業員達への悪影響を軽減する措置を取るべきだったと強調した。NIIの調査の中ではまた、従業員が過去のスプレッドシートをコピーしたり、捏造データをコンピューターに入力するのがいかに容易に行えたかが具体的に示されたとしている。

 しかし報告書は、「こと原子力に係わるサイトでは、記録を捏造するなど誰にも許されることではない」と言明。MOX燃料製造施設の管理者達が燃料棒の製造区域では特に、作業の監視や従業員達とのコミュニケーションに十分な時間を取っていなかったという事実からも、ペレットの外径計測検査という作業への自覚が従業員および品質管理検査官ともに足らなかったことは明白だと指摘した。

 なおNIIはこのほかに、関西電力に納入された燃料集合体の安全性について「データが改ざんされていても、100%自動で一次検査を受けたペレットが燃料棒に使われている場合、安全操業上の問題はない」と強調しており、あとは実質的にBNFLと関西電力との契約上の問題だとの見解を示している。


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