[原子力産業新聞] 2000年3月2日 第2027号 <3面>

[IAEA] タイの被曝事象で援助提供へ

 国際原子力機関(IAEA)は2月22日、タイで起きた放射線被曝事象に対し、同国に緊急医療援助の提供を申し出たことを明らかにした。この事故は放射線治療資機材の廃材置場で使用済みの医療用コバルト60線源により9名が被曝したというもので、初期報道ではこのうち2名が集中治療を受けていると伝えられている。

 IAEAでは被曝事象の詳細は今後、タイ政府当局の報告を得たねばならないとしながらも、「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」に基づいて同国に医療に係わる専門家および資機材を提供する用意があると発表したもの。タイは86年のチェルノブイリ事故後に創設された同条約に加盟する79か国の1つ。

 コバルト60線源はがん治療のために広く用いられているが、通常は同線源からのガンマ線を遮るため、厚さ2メートルの壁で仕切られた特殊な部屋に備え付けられている。仏原子力安全防護研究所によると、50年代の末以降、原子力産業界を除いた放射線源の産業.利用および医学利用により、世界中で約300件の被曝事象が起きているという。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.