[原子力産業新聞] 2000年3月2日 第2027号 <4面>

[日本原子力研究所] 岩石から27元素定量

 日本原子力研究所は、新たに多重ガンマ線検出装置(GEMINI)を使用して微量元素の高感度・高精度測定法を開発し、僅か10ミリグラムの岩石標準試料から27元素の同時定量に成功した。

 試料を熱中性子で放射化した後に放出されるガンマ線を単一の検出器で測定する従来の放射化分析法では、環境中の試料などのように多くの元素を含む場合には化学分離する必要があり、分離後の核種の回収率の誤差が分析結果に大きな影響を与えるなどの理由により微量成分の定量が困難だった。

 原研では、放射化された核種から放出される複数のガンマ線を、多重ガンマ線検出装置で同時測定し得られた二次元マトリクスを解析する方法を考案し、複数核種の完全分離と同時に成功した。

原研によると、この方法は従来の定量法に比べて1000倍の高分解能が得られるばかりでなく、中性子照射の後、核種分離のための化学処理が不要なため作業者を被曝から防ぐことができ、また化学分離のプロセスがないため回収率誤差がなく、定量精度が高いうえ、揮発性元素の定量も容易にできるメリットがある。

 この方法で、測定のための試料は10ミリグラムオーダーで足り、環境中や生体の試料における微量な重元素の定量のほか、美術品等の年代測定、半導体材料の純度測定など、多元素を含む試料の微量分析にも役立つと期待される。


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