[原子力産業新聞] 2000年3月2日 第2027号 <4面>

[清水建設] 構造解析システムを開発

 清水建設はこのほど、超高層建築物や原子力関連構造物など大型鉄筋コンクリート構造物の大地震による破壊過程を高精度に解析できる構造解析システム「FASCOS」を開発、実用化した。構造部材の強度に及ぼす寸法効果の影響度合を把握して、部材の一部に破壊が始まってから全体の崩壊にいたるまでの過程を新たに開発した2種類の数値計算用モデルを使って解析するシステム。寸法効果の影響を踏まえた構造解析システムの開発は業界初。

 大型鉄筋コンクリート構造物の耐震設計では、大地震による破壊過程を正確に分析し、その結果を反映させる必要がある。従来、破壊過程は構造部材を縮尺した試験体による実験で把握してきたが、部材の強度が実大より大きく現れるという寸法効果が生まれてしまい、設計者は実験結果を工学的に判断して設計に反映していた。また今後、建築・土木の各分野とも性能規定型設計手法に移行する方向にあることから、今まで以上に耐震性能を精度よく定量的に確認・評価できるシステムの開発が求められていた。

 同社は、コンクリートの中で実際に破壊が起こる粗骨材とモルタルとの界面領域での破壊現象をモデル化した「一般化マイクロプレーンコンクリートモデル」と、界面領域の中で特に破壊が集中する部位で消費される破壊エネルギーと、破壊集中部位での破壊を助長する弾性エネルギーをモデル化した「多等価値列相モデル」――という、これまで解析や実験では困難だったコンクリートの破壊現象を微細にとらえることができる2種類の数値計算用モデルを開発。

 「FASCOS」は、これら数値計算用モデルをオランダ応用科学研究機関が開発した汎用有限要素解析システム「DIANA」に組み込んで統合化したワークステション向けの構造解析システムで、@高度化・複雑化する大型鉄筋コンクリート構造物の耐震性能評価設計を的確に把握できるため、より合理的な耐震設計が可能で、工事費削減が期待できるA縮尺した試験体での実験の一部を解析で代替できるので、従来に比べて迅速に作業が行える――などのメリットがある。


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