[原子力産業新聞] 2000年3月9日 第2028号 <2面>

[原産・検討懇] 「研究炉機構」設立を提唱

 日本原子力産業会議の「研究炉に関する検討懇談会」(委員長・秋山守東大名誉教授)は6日、「研究炉のあり方に関する検討報告書」を取りまとめた。これは我が国の大学、研究機関、メーカーが現有している12基の研究炉を中心にその課題等について検討したもので、報告書では研究炉は基礎研究、人材養成など重要な役割を担っているものの、その多くが高経年化、人員不足、バックエンド問題などに直面し、とりわけ私大炉では経営困難や社会的制約のため運転継続が困難になるなど深刻な事態に直面していると指摘し、これらの課題に早急に対処するため「研究炉機構」(仮称)のような組織を設立し、研究炉の利用を総合的に推進していくよう提言している。

 報告書によると、我が国の研究炉はこれまで15基および臨界集合体10基が建設され、教育や基礎研究・開発に大きく貢献し、原子力基礎技術の教育・研究・開発の設備として「基本的なもの」であると指摘。原子力開発を進める我が国にあって、今後とも原子力の技術と安全を支える人材の養成や一層の原子力技術の向上と発展を図っていくために研究炉はますます不可欠な存在だとの認識を示している。

 しかし、一方では多くの炉で高経年化、人員不足、経営困難、社会的な困難などの問題が顕在化しており、管理・運賞・利用が圧迫されていると分析。さらにバックエンド対策等が整備されていないこともあって、次期の研究炉計画も立てにくい状況にあり、加えて主として私大炉では経営困難あるいは社会的な制約のために運転継続が困難になるという事態が発生し、殆ど解決の糸口が児つからない状態だと指摘している。

 こうした状況と今後の研究炉に対する大きな期待を踏まえ、報告書では「研究炉は社会共通の資産」であるとの認識を新たにして、全日本的な視野でこれら問題に対処すべき時代に入ったと論じ、問題の早急な対応のため「研究炉機構」のような組織を設置すべきことを提案している。

 同機構案によると@国内の研究炉の健全な運営利用を総合的に支援・促進するA現有研究炉のうち必要なものについて、国の方針に基づいて管理・運営を支援するB研究炉の維持・管理に係わる諸問題について調査・提案、必要な施策を遂行するCバックエンド問題や新しい研究炉計画等について調査・提案する――などの業務を行うとしている。管理・運営について必要と考えられる支援は公的資金と民間資金を運用して行う。

こうした機構設立案について、今後はどのような形態・運営が必要かなど具体化に向け取り組んでいく。


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