[原子力産業新聞] 2000年3月16日 第2029号 <1面>

[エネ政策] 深谷通産相、会見で表明

「エネルギー政策再検討へ」、COP3公約は堅持

深谷隆司通産大臣は10日、閣議後の会見で、今後のわが国のエネルギー政策についての再検討を、4月から約1年をかけて行っていく考えを明らかにした。これは現行の長期エネルギー需給見通しが策定された98年当時の予測と現在の状況との間に、長引く景気低迷の影響から思いのほかエネルギー消費が伸びていないなどのギャップが生じていることから、「もう一度エネルギー政策について検討をすべきではないか」と就任以来感じていた同相が、先に開かれた閣僚懇談会で発表したことを明らかにしたもので、小渕首相も一定の理解を示しているという。なお、この再検討について深谷通産相は@検討を行う調査会(どういったものになるかは未定)を設置するA場合によっては、長期エネルギー需給見通しの見直しも行う−ことも、合わせて明らかにしている。

深谷通産相は、長引く不況の影響で、98年度の産業部門のエネルギー消費では石油ショック以来初めてのマイナスを記録する一方、民生・運輸部門などでは逆に、エネルギー消費は増加を続けているという最近のエネルギー情勢について、「著しい変化が起こりつつあり、98年に立てた長期エネルギー政策について、一体このままで良いのだろうかという思いを持ちつづけていた」と発言。加えてアラビア石油がサウジでの権益を喪失したことも「供給面ではいささかの変化はないが、やはり、ひとつの大きな変化と考えていくべき」と述べた。

そして同相は、これら状況を考えていくと、気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)の公約実現を視野に入れて98年に立てられた長期エネルギー需給見通しに対し、「本格的な検討をしていって、国民の皆さまにエネルギー問題をご一緒に考えていただく」必要があるとの考えに至ったとした。

検討について同相は、例えばメタンハイドレート(シャーベット状で海底に閉じこめられたメタン)など今まで使われていなかったエネルギーの開発などといった「いろいろな角度から新しいエネルギーの開発や、省エネといったものに、国民全体で取り組んでいけるような状況を作っていきたい」との方針を示すとともに、長期エネルギー需給見通しの「見直しということも含めた」検討を行うと述べ、同見通しの改定もあり得るとの可能性を示唆した。検討を行う組織については「専門家を集めたエネルギー調査会を設置する」と述べるにとどまり、既存の組織を使うか新しい組織をつくるかについては、現在のところ検討中ということだ。

一方、現在の長期エネルギー需給見通しの数字について、検討作業の結果変更されるかについては現在のところ不明であるが、「2010年までに見込んでいるエネルギー量、あるいは政策そのものの目標値はそんなに変えるべきではない」との見方を示している。

また同相は原子力発電について、現状の建設目標値(2010年度までに16〜20基建設)の達成は難しいとの見方を示しつつも、一部で原子力発電所の建設目標数を13基にまで減らすとの報道が行われたことについて、「はっきり申し上げて正しくない」「直ちにそのような内容を用意している状態ではない」と、きっぱりと否定。加えて京都議定書に示された国際公約達成の目標は変えないとの方針を述べ、東海材のJCO施設で起きた臨界事故を「原子力発電所の安全性や危険性ということに連動して考えてもらうのは、違うことだ」と強調した。

さらに同相は「原子力発電所の安全性、原子カエネルギーのクリーン性、供給性、安定的な供給をできる経済性、その他もろもろの価値観は変わっていない」と述べ、原子力エネルギーの重要牲は、いささかも減じていない事を強く訴えた。


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