[原子力産業新聞] 2000年3月16日 第2029号 <2面> |
[平和利用研究会] 核不拡散シンポを開催21世紀の行動計画示す原子力平和利用核不拡散政策研究会(座長・黒澤満大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)は9、10日、2000年核不拡散条約(NPT)再検討会議、沖縄サミット、わが国原子力長期計画改定などの動きを見据えて、国際シンポジウム「21世紀の原子力平和利用と核問題−人類の智恵の結集と挑戦」を、東京都内で開催し「原子力平和利用と核不拡散−21世紀に向けた行動計画」と題する5項目からなる提言案を示した。 シンポは「冷戦終結の負の遺産の後始末と核問題」「核不拡散と原子力平和利用の接点」「核不拡散に関わる国際的枠組みと日本の役割と貢献」など五つの部から構成。それぞれ2人のモデレーターのもとで国内外の専門家らが討論した。 第1パネル「核不拡散の理念と実現」では、下荒地修二日本国際問題研究所軍縮不拡散促進センター次長が、印パ核実験を受けて開かれた「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」で打ち出された17項目の提言へのフォローアップを求めるなど、議論に対する先鞭を与えた。J.ホラム米国務省軍備管理・国際安全保障問題担当上級顧問は、「NPTこそ核不拡散の柱」とした上で、95年に続く今年のNPT再検討会議では、@拡散防止A軍縮B平和利用−を目標に体制強化を図っていくほか、前回示された「原則と目標」に関連し、前進のみられない包括的核実験禁止条約(CTBT)の具現・補強化や北朝鮮核疑惑問題改善について、これまでのレビューを行うことを訴え、核軍縮を必ず実現することを目指す考えを前らかにした。一方、米上院のCTBT承認否決の影響について、浅田正彦京都大学教授は@法的側面A他国との関係B長期的見通し−から検討した上、米の条約批准が極めて重要なことから次期大統領選挙が注目されると指摘。 また、安全保障問題が専門のB.チェラニー印政策研究所教授が発表し、その中で90年代の技術の進展や情報の発達から、新たな破壊兵器の出現する恐れを危惧し、平和な21世紀が迎えられることを望んだが、民族や国家の利権が各国の競争を激化する国際情勢が、19世紀以来変わっていないことを示唆。その上で、核が政治的抑止力だという考えをなくさないと、核廃絶は期待できないなどと述べた。 終わりに、原子力がエネルギー安定供給と、地球環境保全に貢献しうるオプションの一つに位置づけられ、その平和利用を実施していくには、安全性の確保と国際核不拡散体制の維持が大前提との考えに立ち、20世紀最後の年に当たり来世紀に向けての行動計画提言案が示された。それは、@世界の核不拡散体制の強化と普遍化A核に関する負の遺産の処理問題の早期解決B民生プルトニウムについて(在庫の透明性向上と安全・確実な管理)C核拡散リスク低減のための国際的技術開発協力D核不拡散政策への日本のイニシアチブの強化−で、具体的にはNPT条約執行機関の設置、IAEA保障措置追加議定書を国際的責務とすること、「核不拡散研究センター」の国内整備他をうたっている。
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