[原子力産業新聞] 2000年3月16日 第2029号 <3面>

[ドイツ] 英のMOXは輸入停止

データ改ざんで釈明要求

英原子燃料会社 (BNFL) が96年にドイツのウンターベーザー原子力発電所 (135万kW、PWR) に納入した MOX 燃料でも品質管理データの改ざんが見つかったことから、ドイツ連邦政府のJ.トリッティン環境相は8日、「BNFL の施設が安全基準を満たしていることに疑問の余地がなくなるまで英国からの MOX 燃料輸入は一時的に停止する」と発表した。

この声明は前日、英国のインデペンデント紙が「BNFL は基準値以下の燃料が自動レーザー検査装置にパスするよう、セラフィールドの MOX 燃料実証施設 (MDF) の検査基準を意図的に下げていた疑いがある」と報道したのを契機に出されたとも言われている。声明の中で同相は、輸入再開の前提条件は BNFL の核燃料施設操業会社としての信頼性に疑念が払拭されることだと言明。BNFL に対しては1週間以内に幹部をドイツに派遣し、詳細な事情を環境省に釈明するよう言い渡した。同相はまた、技術杓な部分はさておき、ドイツの使用済み燃料をセラフィールドの再処理施設に輸送することが未だに禁止されたままなのは、BNFL 全体を取り巻く安全性の問題が未だに十分説明されていないからだと強調した。

一方、ウンターベーザー原子カ発電所を運転するプロイセン・エレクトラ (電力) 社ではすでに2月25日に同発電所を停止。28日から10日間の日程で問題の MOX 燃料集合体4体を取り外した。この4体のペレットについて BNFL は2月22日の報告書で「すべて全自動のレーザー・マイクロメーターによる一次計測をパスしており、原子炉で使用しても安全上問題ない」との認識を表明していた。しかし、プロイセン電力では「安全確保に万全を期すため取り外しを決めた」と説明している。

今回のドイツの声明について BNFL は、「予め予想していたことで、現時点で MOX 燃料は製造していないので冷静に受けとめている」とコメント。英国保健安全管理局 (HSE) から指示された改善措置を取るまでは、MOX 燃料を製造しない方針だと明言した。また、ドイツ環境省の呼び出しについては喜んで応じる構えであると述べたほか、インデペンデント紙の報道については、燃料製造における工程の詳しい説明を交えながら「事実無根」であることを強調した。


なおプロイセン電力は3月1日、ウンターベーザー発電所のほかに同社が運転するブロックドルフ原子力発電所 (144万kW、PWR) の両方で、年内にもロシア製の核燃料を装荷する計画であることを明らかにしている。同社の声明によると、この燃料はフランスで使用済み燃料を再処理した後に回収できるウランとロシアの核解体から出る高濃縮ウランを混合して作られる「濃縮再処理ウラン (ERU)」で、これを自社の原子炉に装荷する許可申請はすでに98年に州の規制当局に提出済み。現在、ドイツ人専門家の指揮管理のもと、ロシアで製造されているところで、今回の BNFL 社製のデータ改ざん燃料の取り外しとは無関係だと明言した。


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