[原子力産業新聞] 2000年3月16日 第2029号 <6面>

[NEI-insight] ユッカマウンテン、環境評価書で意見聴取

高レベル廃棄物貯蔵計画

エネルギー省 (DOE) は、高レベル廃棄物貯蔵所サイトとして提案されているユッカマウンテンの環境影響評価の草案をまとめたが、これに意見を持つ人はだれであっても、そうした意見を表明する十分な機会を持っている。

DOE は、4か月間に17回の公聴会を開催するなど、環境影響評価に対する意見を広範に聴取した。ワシントン DC で昨年10月に開催された公聴会では、それ以前に開かれた公聴会と同じく、DOE は、反原子力の活動家から、放射性廃棄物の処分法としてはこれしかないと考えている支持者まで、幅広い層の人たちから意見を聞いた。この会合ではまた、DOE の専門委員団に対し、高レベル廃棄物用として深地層処分施設を建設するという政府の計画を支持する根拠のある主張が多数述べられた。

信頼できる廃棄物政策

米商工会議所の環境・規制問題担当副会頭を務めるウィリアム・コーバックスは、DOE の専門委員団に対し、「我々が原子力による多様なエネルギー供給と環境保護という二重の利益を受け取るためには、信頼できる廃棄物管理政策を思案しなければならない」と語った。また同氏は、「こうした政策では、放射性廃棄物を集中的に貯蔵、処分するための施設が最低限利用できるようにしなければならない」とも述べた。

国際電力労連で電力局長を務めるジェームス・ドゥショーは、「われわれは、これまでの経験から、アメリカ国民や環境に危害を及ぼすことなく放射性物質を安全に輸送できるということを示してきた。国内の原子力発電所から出る使用済み燃料用の貯蔵所としてユッカマウンテン計画を進めることに意義がある」と指摘した。

原子力エネルギー協会 (NEI) のスティーブン・クラフトは、こうした意見と同様な発言をした。クラフトは DOE に対し、「どのような合理的な比較基準に基づいても、ユッカマウンテン・プロジェクトを進めることが理に適っている」とした上で、「そうすることは、DOE による実行可能性評価や現在の環境影響声明の中でまとめられた膨大な証拠によって支持されている」と語った。

影響を及ぼす可能性はまったくなし

使用済み燃料管理担当局長のクラフトは、昨年の10月26日に開かれた公聴会で、「貯蔵所が環境や健康に及ぼす影響はゼロになる可能性がきわめて高い。かなり保守的に見積もったとしても、発生が予想される影響はほぼゼロになるだろう」との見方を示した。

クラフトはまた、報告書の中で検討されているまったく何もしないという2つの方法のように、72か所の原子力発電所と DOE の5か所のサイトから発生する使用済み燃料を1万年間にわたってそのままにしておくことの方が経費も多くかかり、公衆の健康や安全により大きなリスクを及ぼすことになろうと指摘した。何もしないという1つの方法では、100年ごとにサイト内の貯蔵システムを更新することによるコストや健康への影響が検討された。またもう1つの方法では、施設が100年後に管理できなくなった場合の健康や安全に及ぼす影響が検討された。

さらにクラフトは、「環境影響声明の草案では、貯蔵所を建設することと何もしない場合が公平に比較されているが、DOE による輸送に関係した影響評価については同じであると言うことはできない。DOE は、あらゆる可能性を持った事故シナリオを検討しようという中で、事実上不可能なことを信じている」と強調した。

クラフトは、使用済み燃料はわずか24年間しか貯蔵所に輸送されないということを考えると、最悪の事故が起こる確率は実質的にゼロであると述べた上で、「そうした致命的な事故が起こる確率は、10万年に1回で起こる確率を持った、隕石の衝突によって命が失われる確率よりはるかに小さい」との考えを示した。

クラフトは最後に、DOE の専門委員団に対し、「貯蔵所を建設することは環境面からみても理に適っている。私たちのために議論しているのではなく、子供たちのために議論しているのである。私たちの子供が成長し、私たちから世界を引き継いだ時には、エネルギーときれいな空気を必要とするだろう。原子力はその両方を与えることができる」との見解を表明した。

DOE の公聴会の完全な記載事項については http://www.ymp.gov/timeline/eis/hearings.pdf を参照。


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