[原子力産業新聞] 2000年3月16日 第2029号 <6面> |
[NEI-insight] エネ省、人材の育成に投資原子力技術プログラムで学生支援友人らには「セウン」の愛称で知られているハワード大学の学生オルワセウン・オラパデ・オラオパは、97年に夢のような宿題をした。彼は、米航空宇宙局(NASA)が木星の第二衛星ユウロペを探索するのに使えるかもしれない遠隔操作の潜水艦の設計で夏を過ごした。エネルギー省(DOE)の原子力局の支援による放射性同位元素を用いた動力システム・プロジェクトは、DOEがすすめいている多くの原子力技術者プログラムの一つである。 オラパデ・オラオパは電気工学の奨学生だが、「私は『トレッキー』、つまりスタートレック (米国の国民的な SF テレビ・シリーズ) の熱狂的なファンである」と言っている。その言葉どおり、彼はエウロペ表面の氷の下に海があるかどうかを調べることを目的としたプロジェクトの仕事ができることにわくわくした。もし、エウロペに海があれば、彼が設計を手伝っているような「ハイドロボット」で生命の徴候を示す海中王国を探査することができるのに。 NASA は、エウロペの氷層の下に水があるかどうかを調べるため、2003年に字宙船を送る計画をたてている。その宇宙船は多分、搭載しているコンピュータの動力源として放射性同位元素を使うことになるとみられている。このコンピュータによって、宇宙船を操縦するだけでなく、データを集めて処理を行い地球に送ることになる。放射性同位元素を用いた動力源は、核兵器には使われていないプルトニウムの同位元素であるプルトニウム238の崩壊熱を用いて電力を起こすものである。 オラパデ・オラオパが夏に行った俗世界とは無縁な仕事は、黒人のための大学として知られているワシントン DC にあるハワード大学と DOE が行っている協力プログラムの一環。このプログラムの目的は、米国が科学や経済の面からみて繁栄できるかどうかを左右するエネルギーに関連した問題を大学生に実際に経験してもらうことと、高い資格を備えたマイノリティのエンジニアや科学者の人数を増やすこと−にある。彼は、「ハイドロボット」の設計について、「今までに誰もやったことがないようなものだったが、いろいろな用途に使えるだろうということが分かった」と語っている。DOE の指導者と一緒になって作業を行った彼ともう一人の学生は、学生達の設計に大きな関心を持っていたジェット推進研究所の科学者達と密接な連携のもとに作業を行った。オラパデ・オラオパは、「DOE のお陰で原子力に対する理解も深まった」とし、原子力の持つ利点についてほかの人にも教えたいとの希望を抱いている。 ジャッキー・ラングワーシーも原子力のことをもっと多く人々に知ってもらいたいと希望している。彼女は、まず若者から始めることが肝要だと指摘。土木工学を専攻する彼女自身、「DOE で実習訓練を行う前は原子力について無知だった」と語っているが、DOE の原子力局で2回の夏を過ごしたあとは、原子力の知識で溢れかえるようになった。そうした知識をいかして彼女は学校の生徒向けのクイズを作ったが、それにはたくさんの調査が必要だったと語っている。彼女は、「このクイズを作ることによって、私は生徒に原子力に関心をもってもらいたかったのかも。そうすると DOE は私一人にではなく、多くの人に投資したことになるわ」と述べた。
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