[原子力産業新聞] 2000年3月23日 第2030号 <4面>

[大阪大学、原研、高輝度研] 「バルク電子状態」解明

 大阪大学、日本原子力研究所、高輝度光科学研究センターはこのほど、「SPring−8」の共用ビームラインに整備された世界トップの性能を実現した超高分解能軟X線分光器と高分解光電子分光実験装置を用いて、現在注目を集めている、固体の真の「バルク電子状態」の解明に世界で初めて成功したことを明らかにした。

 光電子分光とは物質に高エネルギーの光を入れたときに出てくる外部光電子のエネルギーを測定することによって、物質の電子状態を調べる手法だ。そのために高温超伝導体を始めとして多くの物質で研究が進んでいる。しかしこれまで全世界に普及している装置では、高い工ネルギーで分解能が足らなかったり、あるいは低いエネルギーで分解能は発揮できるものの固体の表面しか観測できないというとても大きな制約があった。多くの固体物質では表面と内部(バルク)の電子状態び大きく異なっているため」、最も知りたい固体内部の情報が得られないという欠点かあった。

 新しい方法では1キロ電子ボルト付近でこれまでのほぼ10倍のエネルギー分解能での測定が可能になった。そのため同体の表面ではなく、バルクの真の電子状態を探れるという特徴を持っている。これまでの光電子分光の弱点をほとんど克服できるこの方法は、特に現在世界的に注目を集めている新しい希土類化合物や、超伝導体、あるいは新規な物理的性質を示す種々の遷移金属化合物など、いわゆる強相関電子系の電子状態の研究に画期的飛躍をもたらすだろうと期待されている。

 また、「SPring−8」はこれまで高輝度のX線光減として注目され成果を挙げてきたが、光輝度軟X線光源としても世界最強であることが証明されたといえよう。


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