[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <2面>

[原子力委専門部会] TRU廃棄物処分の基本方針まとめ

 原子力委員会の原子力バックエンド対策専門部会(部会長・熊谷信昭阪大名誉教授)は23日、再処理施設の運転などに伴い発生する超ウラン(TRU)核種を含む放射性廃棄物処理処分の基本的考え方とマイナーアクチニドなど長寿命核種の分離変換技術の今後の研究開発のあり方についての2つの報告書を取りまとめた。いずれも昨年11月末に出した報告書案について一般からの募集した意見等を踏まえて策定したもので、近く原子力委員会に報告し、正式決定される。

 TRU廃棄物は再処理施設やMOX燃料加工施設の運転・解体に伴って発生する(RI利用施設等からも発生)。使用済みフィルター、廃液、紙タオルなどの低レベルなものから、使用済み燃料の被覆菅の断片等(ハル・エンドピース)のような比較的高い濃度のものまで幅広いのが特徴。発生量は合計5万6000立法メートルと推定され、うち約80%が再処理施設の運転に伴うものと見込まれている。処理方法は濃縮廃液はアスファルト固化やペレット化しセメント固化、ハル・エンドピースは圧縮してキャニスターに収納、可燃・難燃・不燃廃棄物は焼却またはセメント固化を想定。

 処分としては、政令濃度上限値を下回るもの(対象廃棄物の約4割)とアルファ核種濃度が数10マイクロシーベルト/年程度とやや上限値を超える廃葉物は、既存の低レベル廃棄物処分概念である浅地中のコンクリートピットや十分余裕を持った深度(50〜100メートル)への処分が可能だとしている。

 また、既存の低レベル廃棄物の処分概念で処分できないと考えられるハル・エンドピースのようなかなり渡度が高く、人間の生活環境から長期間隔離しておく必要があるTRU廃棄物については、@半減期が長く、かつ天然バリアヘの吸着が小さいため地下水とともに移行しやすい核種であるヨウ素129や炭素14を多く含む廃銀吸着材のセメント固化体A前述のものに加えまとめて処分する際には発熱の影響を考慮する必要があるハル・エンドピースの圧縮収納体B放射性核種の地下水への溶解度や人エバリア等への吸着性に影響を及ぼす可能性が考えられる硝酸塩等の化学物質を多く含むプロセス濃縮廃液のアスファルト固化体等Cそれ以外の廃棄体――の4つにグループ化を行い、比較的大きな地下空洞にまとめて地層処分することが可能だとしている。

 一方、長寿命核種分離変換技術研究の今後の進め方については、@サイクル機構と電中研が検討しているFBRを中心とする一つの核燃料サイクルの中で発電とマイナーアクチニド(MA)等の核変換を同時に行うことを目指す「発電用高速原子炉利用型」A原研が検討している加速器駆動未臨界炉(ADS)あるいは専焼高速炉(ABR)といったMA変換専用システムを核変換システムの中心に捉え、商用発電サイクルと核変換サイクルの2つのサイクルかそれぞれに最適化を図り、独立に発展可能な「階層型」――の2方式の技術開発を当面進めることが適当だとしている。

 さらに、これら一連のプロセスが成立することを実証するための基礎試験を進め、成立性が実証されたシステムについて安全性等に関するデータを取得するための工学試験を実施する。その際は定期的にチェック・アンドーレビューを行い、シナリオの見直しを行いつつ研究開発を進めていくことが重要だとも指摘している。

 また現行の高レベル放射性廃乗物の地層処分システムとの関連では、この分離変換技術が実現されたとしても、わずかであるが長寿命核種を含む放射性廃葉物が不可避的に発生するため、それらを処分するための地層処分が必要となること、つまり分離変換技術は地層処分の必要性を変えるものではないと強調している。


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