[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <3面>

[米・DOE] 世界のエネ見通しを公表

 米国エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(EIA)は16日、2000年版の「世界のエネルギー見通し」を発表し、世界市場での原油価格の上昇や東南アジア諸国における予想外の経済回復により、世界のエネルギー消費は97年から2020年までの間に60%増加するとの見方を示した。

 この見通しはEIAが毎年まとめているもので、2000年版ではまず、各国のエネルギー政策に大きな変更がなければ世界のエネルギー消費は少なくとも2020年までの間に60%増加し続けると指摘。特に途上国における消費量は121%と平均伸び率より高くなっているほか、天然ガスの消費伸ぴ率も104%になると見積もっている。

 99年は特に韓国で、エネルギー消費量が不況に陥る前の水準を上回るなど、アジア諸国でのエネルギー需要増加が著しく、堅調な経済成長はこれらの国が不況から脱したことを示していると指摘している。また、東南アジア地域で拡大したエネルギー需要が世界市場の石油価格を押し上げたことから、ロシア経済にも良い影響が及ぼされ、同国のGDPは80年代後半以降、最大の上げ幅を記録したことを明らかにした。

 電力消費に限れば、2000年版の基本シナリオでは、97年に12兆キロワット時だったのが2020年には76%拡大して22兆キロワット時に達すると予測。長期的にはアジアの発展途上国を筆頭に中米、南米地域の順で需要が拡大するとしているが、EIAではこの増加は多分に人口増加が顕著なこれらの地域で、どの程度の人々が電力を利用可能になるかという点にかかっていると強調した。

 EIAはまた、世界のCO2排出量についても昨年版の見通しより早いテンポで増加すると判断しており、基本シナリオで90年から2010年までの間に40%増の81億トンに、90年から2020年までの計算では72%増の100億トンに達すると予測した。ここでの前提条件は、原子力を利用できる規模が不明確であるとしている一方、旧ソ連諸国で思いのほか石油依存度が増大している事実に言及。特にウクライナとロシアの著しい経済回復が2020年時点の旧ソ連諸国のエネルギー消費予測量を昨年予測より12%押し上げたことなどをデータが塗り変わった理由に挙げている。

 世界の電力消費に対する原子力発電のシェアに関しては、EIAは2020年までは年率2.5%の成長を見込んでいるものの、あまり明確ではないとの見解を示している。2000年版予測の基本シナリオにおいて、原子力は2010年の設備容量が世界全体で3億6800万キロワットに到達するが、これ以後は下降に転じ、2020年には3億300万キロワットまで減少すると予測している。短期的には極東地域を中心に積極的な容量拡大が図られる一方、米国その他の国で運転寿命を迎える原子炉の容量が新規容量を上回るとの認識を示した。具体的にEIAは、アジア諸国で2020年までに増加する容量を約3000万キロワット、原子力先進国での閉鎖容量を6400万キロワットと見積もっている。

 なおEIAは、原子力の予測については基本シナリオより低成長と高成長の代替案も提示している。低成長シナリオでは2020年の容量は世界全体で1億9300万キロワットと予想しているが、高成長シナリオでは同じ時期にネットで260万キロワット分の増加を見込んでいる。ただしこの場合、米国の原子炉で経年劣化に歯止めがかかり、運転認可が更新されることが前提条件。もしくは、新規ユニットの工期が短縮されたり、既存炉の運転寿命延長が規定されることが必要となる。


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