[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <3面>

[スペイン] 「原子力発電は堅持」

 12日にスペイン議会下院の総選挙が行われ、「国内で稼働する9基すべての原子力発電所の早期閉鎖」を綱領としていた野党連合が惨敗し、保守派の国民党(PP)が安定多数を確保して2期目の政権を取ることになった。

 今回、J・M・アスナール党首率いる国民党は350議席中183議席を獲得。96年の前回選挙よりさらに議席を27、増やす結果になった。一方、共同キャンペーンを展開していた社会党(PSOE)と左派連合(UI)の獲得議席数は合計133議席で、改選前と比べてそれぞれ16、13議席を失っている。この野党連合は選挙戦におけるエネルギー政策として、国内で稼働する9基の原子炉はホセ・カブレラ(ゾリタ)発電所やサンタ・マリアーデ・ガローナ発電所など古い原子炉から順に閉鎖していき、次回選挙が予定されている2005年までには全ての原子炉を閉鎖して再生可能エネルギー源で代替する、などの案を提示していたもの。

 これに対して同国原子力産業会議を始めとする電力業界は、次のような議論を展開してこれに対抗していた。すなわち、@原子力発電所が国内の総電力需要の3割を賄っているお陰で輸入石油やガスヘの依存度が低いA経済性や技術的側面、環境への影響と言う点から考えても原子力発電所を早期に閉鎖する理由は何もないB原子力はスペインで最も安価な電源であるC業界では原子炉を最短でも40年運転することを目標にしており、これに達する前の閉鎖は消費者に莫大な負担を強いることになる――など。

 今回の選挙結果により、原子力開発の継続と発電業者に対する回収不能資金の回収計画も据え置かれることになったことから、産業界では一様に胸を撫で下ろしている。


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