[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <5面>

[原子力委・長計策定会議] 「総合科学」への位置付け審議

 原子力委員会の長期計画策定会議(座長・那須翔東京電力相談役)は14日、第7回会合を開き、松浦祥次郎日本原子力研究所理事長のプレゼンテーションに加え、同会議第4、5分科会からの論点整理の報告を受けた。また森嶌昭夫座長代理から、策定会議がまとめる「議論のたたき台」の前提となる「原子力長期計画についてのメモ」が提出され、これを基に各委員の意見を書面で求め、次回に森嶌氏からたたき台が提出されることになった。

 松浦氏による「総合科学技術と原子力」と題するプレゼンテーションでは、各種化学分析技術や日本刀製作、ガラス細工などの伝統工芸の後継者不足を例に、一旦衰退した技術の回復が非常に困難なことを危惧し、長期的視野に立った研究開発とその評価、技術の確実な継承の必要が指摘された。

 「未来を拓く先端的技術開発」がテーマの第4分科会からは、座長の永宮正治高エネルギー加速器研究機構教授が、これまでの検討項目@先端的・総合的科学技術としての原子力A未踏領域への挑戦B持続可能な技術の発展――についての整理をし、今後は大枠の議論を主眼にまとめに入ることなどを述べた。これらに関連し委員からは相次ぐ事故を懸念して、日本では本当に洗練された製品を作っているのか、責任ある仕事をしているのかといった声が聞かれた。

 また、「国民生活に貢献する放射線利用」の第5分科会からは、同じく座長久保寺昭子東京理科大字教授が論点整理をし、そこで現状の問題点として放射線利用が国民社会に十分受け入れられていないことを挙げ、情報公開に努めていくべきなどと主張した。この他、苦痛のない診断・治療を目指した医療利用では臨床試験での法的規制、食品照射では技術者不足、工業利用では幅広い応用による恩恵がほとんど人々に理解されていないことなど問題点を指摘。久保寺氏は、密封されていない線源の約9割が放射性薬剤に相当するという実情、健康影響を考える上で被爆国日本には他国にないデータがあることにも触れた。これに対しては、大学炉での多くの治療・実績、臨界事故がきっかけで中性子治療が知られるようになったことを挙げて、諸外国の動向にも注目しつつ、広く放射線医学利用を啓発していく必要を訴える委員からの意見が出た。

 両分科会とも4、5月にかけて報告書を取りまとめていく予定。


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