[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <5面>

[社会経済生産性本部] 国際的視野で協力を

 社会経済生産性本部による「アジア・エネルギー調査団」(団長・木元教子原子力委員)は2月17〜18日、インド、ネパールに渡航し、両国の政府機関との懇談や発電所視察を行った。

 この調査団は、アジア地域の経済動向、エネルギー事情、環境問題などの実態把握により、わが国のエネ・環境政策に資するため96年度のタイ、ベトナム、インドネシア訪問から、毎年度派遣されているもの。今回のメンバーは木元団長以下、中村政雄電力中央研究所研究顧問、藤井巖元NHK松江放送局長他、電力関係者ら計9名で構成された。

 3日の原子力委員会に報告されたところによると、インドでは日本国大使館、非在来型エネ資源省、電力省、原発公社を訪問。大使館によれば核実験後の日印関係は回復傾向にあるとのこと。

 一方、同国の電力需給はピーク時で約10%不足状態、原発は現在10基188万キロワットが稼働しており、全設備容量の2.5%を占め、設備利用率は79%(99年)だが、今後はそれぞれ15%、85%までに高めるのが目標という。カクラバール原発(加圧型重水炉、22万キロワット×2基、93〜95運開)は、運転したまま3か月ごとに検査、2年に1度違転を停止して30日程度検査するなどしており、運開以来大きなトラブルはなく、周辺住民とは雇用、見学受け入れなどを通じて共生を図っている。また、新エネでは風カプラント計約4000台110万キロワットが稼働している。

 一方、水力発電が中心で火力や原子力の計画は持たないネパールは、大使館によると日本に対して親近感を持っている国民が多いという。ここも電力不足に悩み、電化率は約15%。2017年までに35%にするのが目標だが、資金難やダム建設反対などの課題がある。急峻な国土事情から土砂堆積が激しく、頻繁な排砂を要する水力サイトもあるという。

 木元団長は原子力委員会での報告の席上、インドで動物の糞をこねて燃料にしている少女の姿や、劣悪な交通事情を目にして、われわれのエネ多消費型の生活を反省するとともに、自国だけでなく他の国も視野に入れて将来的な原子力の必要性を認識していくことが重要と訴え、今回の訪問が意義深かったことをコメントした。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.