[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <5面>

[原研] 新同位体を発見

 日本原子力研究所の先端基礎研究センターは9日、東京都立大学、名古屋大学、広島大学と協力して、アメリシウム(Am)とキュリウム(Cm)の新しい同位体Am233、Cm237を発見したことを明らかにした。

 先端基礎研究センター超アクチノイド元素化学研究グルーブは、Am、Cm、バークリウムなどの領域における未知の同位体の探索、これら同位体からのごくわずかなα壊変の情報を系統的に明らかにする研究を98年度から行っており、これまでに、Am236の発見と半減期の決定に成功している。

 近年、各国の研究機関では加速器を利用して、地上には存在しない非常に重い原子核(超重核)の発見が続いているが、多くの場合その存在が確認されただけで原子核の重さ(原子質量)まではわかっていない。原子質量は、一体どこまで重い原子核が存在しうるか、また星の中で元素がどのように合成されているのかを推論する上で基本となる重要な量だ。

 多くの超重核はα粒子を放出して軽い原子核(娘核)へと変化し(α壊変)、娘核がさらにα壊変するという過程を繰り返して、やがて原子質量のわかっている安定な原子核に落ち着く。この壊変系列中の全α粒子のエネルギーがわかれば、既知の原子質量にα粒子の質量とエネルギーを順次加えて娘から親へとたどっていくことにより最終的に超重核の原子質量が求められる。

 しかし、その系列の中に未発見の原子核があると、これは不可能になる。今回発見した同位体は、まさにそのような未発見の原子核を持つものだった。

 Am233、Cm237は、原研東海研のタンデム加速器から得られるリチウムビームを、それぞれウラン233、ネプツニウム237ターゲットに照射して合成された。このような同位体は半減期が短く、またα粒子の放出割合が極めて小さいためこれまでは検出が難しかったが、原研では、ターゲットで生成する種々の粒子をガスジェット気流に乗せて2〜3秒以内に質量分離器へ搬送し、質量別に分離された生成物から放出されるα線を高い効率で連続測定することによりこれを可能にした。その結果Am233、Cm237のα粒子エネルギーが、それぞれ6.74メガ電子ボルト、6.66メガ電子ボルトであること、Am233の半減期は3.2分であることを突き止めた。

 原研では今後、ターゲットとしてプルトニウムやキュリウムといったより重い物質を使うことにより、さらに重い元素の同位体を研究する計画だ。


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