[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <6面>

[米国] 核変換計画を立案

 オメガ計画の下に我が国が世界の先頭を切って研究を行っている長寿命核種の分離変換技術について、米国も加速器駆動核変換技術(ATW)計画を打ち立て実施する考えであることが、日本原子力研究所の原子力委員会への報告で明らかとなった。

 現在、米では軽水炉使用済み燃料は高レベル廃棄物として、ユッカマウンテンに処分する方針だが、2030年頃までに炉運転に伴う使用済み燃料が約9万トン発生するのに対して、受け入れ容量が6万3000トンしかないため、分離によりプルトニウム、ネプツニウム等のマイナーアクチニド(MA)や長寿命核分裂生成物を核変換することにより、全量処分を可能にするのが、このATW(Acceleration Transmutation of Waste)計画。ここで得られた燃料を大強度陽子加速器で燃やすことより、プルトニウム、MAが1000分の1程度に減量されるほか、プルトニウムを消費することで将来の悪用の可能性をなくすこともできる。ATWはこのような目的を果たす研究開発を、当面6年間国際協力も生かして行う計画だという。

 米でのATW開発は、80年代ロスアラモス研で研究が始まり、97年の上院議員提案、99年度予算計上を経て、同11月にエネルギー省による開発指針(□ードマップ)検討に資する報告書が議会に提出された。それによるとATW導入の規模は、現行軽水炉の許可期限延長がなく新規発注もないと想定し、全使用済み燃料約9万トンを約100年間で処理する目標で、研究からデコミッショニングまでで約120年間に及ぶシナリオを想定。施設展開は1ギガ電子ボルト加速器2基を備える基地を8か所整備する考え。「ロードマップ」は、ATW有無にかかわらず最終処分場は必要としているが、処分施設での線量低減等だけでなく、国際的にも貢献すると評価している。一方、原研の「オメガ計画」も加速器駆動未臨界システムを用いて核変換する技術開発を目指しているが、プルトニウムは対象ではない。

 ATW開発指針報告書は、欧州や日本での既存の計画との強固な国際協力等を勧告し、米にとってのコスト・スケジュール上のメリットを掲げている。原研では同計画について、共通技術等について協力できるかどうか検討している。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.