[原子力産業新聞] 2000年3月30日 第2031号 <6面>

[原研・原燃工] トリチウム増殖材微小球生産にメド

 日本原子力研究所は14日、原子燃料工業との共同研究により、核融合炉用燃料を生産するための「トリチウム増殖材微小球」を大量に製造する技術を確立したことを明らかにした。

 トリチウム増殖材は、それを効率的に生成・回収する機能を果たすため、高い増殖特性、温度保持、健全性、経済性が要求される。現在、日本、欧州、米、ロシアの各種で開発されている原型炉用のブランケットの設計概念によれば、固体増殖材料は2〜3成分系のリチウム含有酸化物で、その形状としては、中性子照射損傷による応力や熱応力による破損を防止する上で優れた微小球が使われている。また、これらのトリチウム増殖材を開発する上で、廃棄物の低減化と資源の有効利用を考慮し、リチウムリサイクルを念頭に置いた開発も必要とされている。

 核融合炉用燃料トリチウムは、プラズマを取り巻くブランケット中に充填された増殖材微小球に、炉の運転によって生じる中性子を照射することにより自らの炉で生産される。この微小球は、直径が0.2〜2ミリメートルのリチウムを含んだセラミックスで、ブランケットの中に100トン程度充填される。これまでトリチウム増殖用のセラミックス製微小球の製造は、世界でも実験室規模でしか行われておらず、大量製造の目処が得られていないのが現状だった。

 このため、原研では94年度から、高温工学試験研究炉用被覆粒子燃料の製造経験を持つ原燃工と共同で、自動滴下装置を用いた微小球製造に取り組んできたが、このほど微小球の核となるゲル球を大量に製造する技術を確立し、年間約150キログラムの微小球製造が可能になったものとみられる。この製造技術により、従来の技術に比べ歩留りもよく、微小球直径の制御と製造装置の大型化が容易にできる見通しが得られた。

 今回の成果によリ、核融合発電炉での重要課題のトリチウム増殖材大量製造技術開発に目途が立ったほか、ITER建設目的の1つ「テストモジュール照射試験」に必要な約1トンの微小球を供給できる見通しを得たといえる。なお、本方法で製造された微小球は今後、欧州の原子炉を用いて共同の照射試験を行う予定。


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