[原子力産業新聞] 2000年4月6日 第2032号 <2面>

[原子力安全委・専門部会] 防災指針改定案示す

 国の災害対策基本法に基づき、地方公共団体等が定めることになっている原子力防災計画の指針となる「原子力発電所等周辺の防災対策について」(防災指針)の5回目の改訂作業を行っている原子力安全委員会・原子力発電所等周辺防災対策専門部会(能澤正雄部会長)は3月18日、新しい防災指針の素案を示した。ここでは@オフサイトセンターなど原子力災害対策特別措置法の仕組みに対応するA従来の原発や再処理施設に加え、研究炉、核燃料関連施設も対象施設にするB従来の希ガスとヨウ素対策に加え、核燃料物資の放出や臨界事故にも対応する――こととし、「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲」(EPZ)の目安値を研究炉や核燃料加工施設等にも定めているのが特徴となっている。

 「EPZ」(Emergency Planning Zone)は、異常事態発生を仮定し、施設の特性等を踏まえてその影響が及ぶ可能性のある範囲(施設を中心とした半径の距離)を、技術的見地から十分余裕をもたせて設定するもので、その範囲内では防災計画、通信手段、資機材、避難場所・経路などの整備を重点的に講じていくよう求めている。

 さらにその目安は、起こりえない仮想事故等の際より相当上回る量の放射性物質が放出されても、EPZ外側では屋内退避などの必要がない範囲としており、境界での積算線量10ミリシーベルト未満。例えば、TMI事故で1週間にわたって放出された放射性物質が1日で放出されても適用できるものとなっている。

 EPZの目安としては、商用発電所や「もんじゅ」「ふげん」「常陽」のような研究開発段階の原子炉施設は、従来通り半径約8〜10キロメートル、また再処理施設で同五キロメートル以内とすることを提案している。

 新たにEPZを設定した試験研究炉については@熱出力1キロワット以下で約50メートルA同1キロワットを超え百キロワット以下で約100メートルB同100キロワットを超え10メガワット以下で約500メートルC同10メガワットを超え50メガワット以下で約1500メートル――としている。また加工施設と臨界量以上の核燃料物質を使用する施設で、臨界事故を考慮するものは約500メートル、廃業施設は約50メートルなど。さらに特殊な研究炉・装置に対するものとして、日本原子力研究所「JRK−4」で約1000メートル、東芝「NCA」で約100メートルなどとそれぞれ目安値を想定している。

 核物質の運搬については容器に対する厳格な試験、異常時の各種対策、場所が特定されないことなどを勘案し、EPZ設定は必要ないとした。使用済み燃料貯蔵施設についても今後、事業が具体化した段階で検封することとし、数値は示していない。

 安全委では、この改訂を6月中旬頃予定の原子力災害対策特別措置法の施行前にまとめたいとしている。


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