[原子力産業新聞] 2000年4月6日 第2032号 <2面> |
[インタビュー] NSネット牧野理事長に聞く昨年9月の東海村・JCO施設で起きた臨界事故を受け、原子力産業に関わる電力、メーカー、燃料加工会社、研究概関などが集まり、自らの手で業界全体の「安全文化」の向上を図ろうという目的で昨年12月に設立された民間団体「ニュークリアセイフティーネットワーク(NSネット)」が、今月からいよいよ本格的な活動を開始する。約4か月ほどの期間ではあるが、実際に運営をしてみて、設立当初に予想されていた事との間にギャップはあるか。本格的な事業開始を目前に控え、準備などは順調に進んでいるか――。牧野理事長に聞いた。 ――設立後4か月になるが、実際に運営してみての感想はどうか。また、事業は順調に進んでいるか。 牧野理事長 世論の原子力に対する風当たりは、ネットが設立した当時(99年12月頃)の方が強く、その頃に比べれば、最近はやや良い方へ向いて来ている。4月からは、いよいよ本格的な事業が始まるのだが、まず最初に行う事業は、各事業所を回る「ピアレビュー」および「安全キャラバン」になる。 事務局でも活動計画について積極的にPRに努めてきたところであるが、NSネットの活動に対しては、国内はもとより海外からの関心も高く、実際に米国原子力協会(NEI)からピアレビューの実施例について情報をいただくなど、日米間の連携も進んでいる。また3月下旬には一般向けホームページも開設し、皆様方にもご覧いただけるようになった。今後は活動状況などをホームページを通じてお伝えしていく事としているが、出来る限り充実した内容のものとしていきたい。 ――間もなく始まるピアレビューについての展望は。 牧野理事長 4月から燃料加工事業所のレビューを皮切りに、各事業所のレビューを毎月実施していく予定だ。ピアレビューは、NSネットの中心的な活動になるものであり、設立の精神を尊重して是非とも実効性のあるものにしていかなくてはならないと考えている。また、これまで相互に行き来し合うことの少なかったもの同士が、お互いの現場を訪問し合って情報を共有し合うことにより、必ずや有益な結果がもたらされるものと確信している。 NSネットの設立当初は「全てをオープンに」するムードが強く、実際それが理想と思う。企業秘密の部分など、難しい部分があるのは事実だが、理想に一歩でも近付けるように努力をしていきたい。 またレビューする事業所やレビュワーの選任、レビューのやり方などについて一つひとつ会員同士で協議・決定してきたが、お互いに内容を良く理解することも重要であり、事務局でも会輿の自主的・自発的な活動を尊重するとともに、十分意見交換を行っていくよう配慮していきたい。 ――今後の抱負は。 牧野理事長 今後の日本のエネルギーの行く道は、省エネと原子力しかない。その二つを順調に進めながら、高速増殖炉へつなげて行くということに、我々は手段を尽くさなくてはならない。 NSネットという団体の理事長として、その設立時の緊張感を忘れることなく、原子力に従事する全ての者が「安全文化」を共有・向上していけるように取り組んで行くとともに、安全面を強調した一般へのパブリシティなどにも貢献していきたい。 牧野昇氏〔まきの・のぼる)1944年東京大卒、49年同大学院修了。東大講師、三菱製鋼取締役・磁材事業部長を経て、70年に三菱総合研究所の設立に参加。同社副社長、会長など歴任の後、現在は相談役を務める。工学博士・技術士。 |